突然の失速。
2021年6月10日。結婚して以来使っていた冷蔵庫が動かなくなった。まる15年動いたのだから長持ちした方だろう。とはいえ、突然の出来事であることには変わりない。予備の冷蔵庫など我が家に持ち合わせはないし、取るものも取り敢えず新しい冷蔵庫を調達することになった。
翌日。
午前中は外せない仕事があったので出勤し、午後半日の有給を取って職場を出た。我が愛車 Vespa GTS250ieにはETCが装着されている。前のオーナーはこれに乗ってよく遠出をしていたのだろうか。自分自身はまだ1度しかこのバイクで高速道路に乗ったことがない。いや、そもそも高速道路を走れるバイクを所有するのはこれが初めてだから、人生で1度しかと言う方が正しい。目的地のコストコはインターチェンジのすぐそばにあり、職場から最寄りのインターチェンジもそう遠くない。せっかくなので、高速に乗ることにした。 GTS250ieというバイクは、とにかく車重が軽い。同クラスの国産スクーターはどのモデルも180kgほどあるのに比べ、GTS250ieは150kgしかない。それなのにエンジンの出力はさほど変わらない。要するに、速い。高速道路に乗っても時速100kmまでストレスなく加速する。あぁ、高速ツーリングも全然いけるな、と思っているうちにコストコ隣接のインターチェンジが近づいてきたので、頭を一般道モードに切り替えながらETCレーンを通過した。
コストコで見た冷蔵庫は、容量や設置面積はクリアしていたものの、作りが大げさだったので一旦購入を見送った。冷蔵と冷凍の2室2扉、片開き。設置はできても扉を開けるためのスペースが足りない。コストコのこういう大げさな感じは、嫌いではない。しかし、そう悠長なことも言っていられない。GTS250ieに座って、次の家電量販店へと走らせる。
バイクといえば普通は「またがる」ものだが、Vespaの場合は「座る」という表現の方がしっくりくる。国産ビッグスクーターのどかっと乗る感じとも違う、Vespaでしか得られない感覚。うーん、見慣れた下六嘉(熊本県下益城郡嘉島町)の景色も違って見えるなぁ、などと思っていたかどうかはもう記憶にない。ただ、下六嘉を走行中にGTS250ieが失速し、後続の車に細心の注意を払いながらゆっくりと路肩に停止させたときに見た景色は、鮮明に覚えている。
偶然にも近くにあった自動車整備工場に入ってみたが人の姿はなく、道の向かいにあったローソンまでGTS250ieを押して運び、デイパックからiPhoneを取り出してJAFを呼んだ。店の人に駐車場でしばらく待たせてもらうことを断り、高速道路を走っているときじゃなくてよかった、という安堵感の後を追うようにやってきた空腹感をミルクホイップデニッシュでなだめた。
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