2024年10月27日
昨晩,寝床で「ゲンロン17」の続き.阿部卓也氏の論考「絵本が登場するとき」が面白い.戦後の絵本の隆盛について,出版文化や印刷技術の観点から記述していく.後半は,こぐま社の「こぐまちゃんえほん」シリーズの成り立ちを追う.印刷技術の制約や発展に依拠した制作体制についての話が面白い.朝起きて,さっそく2冊ある「こぐまちゃん」シリーズの絵本をリトルKに読み聞かせつつ,思いを馳せる. なんと呼べばいいのかわからないのだが「カルチャー好き」みたいな好みがあって,自分もまたそういう傾向がある.身近にそういう人がいたことがほとんどないが,ネットにはたくさんいる.その好みについてふと考えていて,これまでは積極的な定義よりも,「こういうのは違う」みたいな定義しかできそうにないと思っていたのだが,何に触れるにしても「批評」的な見方がバックボーンにあるというのが「カルチャー好き」の本質なんじゃないかと思ったりした.その「批評」とは何かというと,自分などは浅田彰氏の好みにかなり強く影響されたわけだが,特定の人物はともかくとして,そういう流れにある「批評」ではあろう.となると,特定の時代的背景に基づく好みなのであろうこともわかる.また,そうした批評への好み自体が衰退していっているだろう中で,むしろ資本による収益性の追求の力によってこそ現代では「カルチャー」もまた駆動されていることになるのだろうみたいな話が,K氏からなされた.そのような現代的カルチャーもまた,好むことができるものが多くあるので,良い悪いということでもないのだが.
母から,リトルKへ手作りのおもちゃと画集が送られてきた.おもちゃの方は,「ビジーボックス」を自作したもの.さっそく楽しく遊び始めた.鳥のおもちゃがすぐに壊れてしまったのが悲しい.修復できるかな.画集は石村嘉成さんのもの.兵庫県立美術館で行われている石村嘉成展で購入したものだという.自分は知らなかったのだが,Kは知っているようだった.とにかく絵に力がある.会場では26メートルに及ぶ作品Animal Historyが展示されているようで,相当なものだろう.画集を眺めて楽しむ. 寝かしつけに失敗したりして遅くなり,14時過ぎに出かける.「ハニワと土偶の近代」を観に,国立近代美術館へ. 埴輪や土偶を近代日本がどのように表象してきたか,それが日本文化に対する認識にどう影響をもたらしてきたかについて,浩瀚な博捜により明らかにする,非常に意欲的な展示.素晴らしい.戦前・戦中の,国粋的な思想を補強するものとしての埴輪から,戦後の埴輪を作り,また,それを掘り出す民衆の力を象徴する存在への変遷,さらには弥生的・縄文的という岡本太郎らに代表されるフレームアップという軸がありつつ,一面的な見方に過度に偏ることなくさまざまな試みを広く取り上げている.時間がなかったのと,リトルKが愚図りまくって途中退出してKと交代で観ることになったのとでじっくり観られなかったのが残念.帰宅してカタログを眺める.その他,特に印象に残った蓑虫山人について,『蓑虫放浪』が売られていたので購入.著者は,「縄文ZINE」の方.こちらも楽しみ.その他,リトルKが気に入った長谷川三郎が描いた土偶のプリントされたマグネットや,「おーい!はに丸」のアクリルキーホルダーを購入. さらに,広尾BOXギャラリーで「松田米司展 やちむんのちから」を観る.松田米司は,沖縄県読谷村で読谷焼を制作している北窯の共同運営者であり,沖縄のうつわ(やちむん)の今に至る人気の功労者のひとりである.自分自身好きでこれまであれこれと買ってきた.今回は,メインは自分では選ばずにKに観てもらったのだが,あれこれと迷って5寸小皿2枚,8寸大皿1枚を選んだ(赤絵の7寸皿は高過ぎて断念).自分は,掌に収まる小さな壺を2つ,リトルKが「これ!」と指差したものを選んだ.良い買い物ができた.へヴィーユースすることになるだろう.
投票所へ寄って,投票して帰宅.リトルKは昨日に引き続き歩きまくったので,帰宅すると母親を追っていこうとするけどよろけたりして,布団に寝かせると寝かしつけもしないまま寝いった.
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