ドネルケバブとは
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私たちが普段目にする「ケバブ」、すなわちドネルケバブ(Döner Kebap)について解説します。言葉の意味はもちろん、実はドネルケバブは今まで紹介したケバブとは異なる立ち位置にいる食べ物なので、誕生についての簡単な歴史を踏まえて、ドネルケバブはどのような立ち位置の食べ物なのかを紹介します。
―言葉の意味
ドネルケバブのドネル(Döner)とは、トルコ語で「回転する」という意味で、ケバブ(Kebap)と合わせると、「回転しながら炙って焼く」という意味になります。正式名称はドネルケバブですが、トルコではドネルと呼ばれています。トルコ系移民が多いドイツでもドナー(ドネルのドイツ語読み)で呼ばれています。
―誕生の歴史
ドネルケバブは、日本では時に「トルコの伝統料理」として紹介されることがありますが、実は誕生から200年経っていない新しい食べ物です。ドネルケバブの歴史は19世紀半ば、トルコのカスタモヌという街でハムディ(Hamdi)氏が発明したことから始まります。(※1830年とする資料や1850年、1855年などとする説があります。)
下の写真は、1855年に「世界初の戦場カメラマン」とも言われるジェームス ロバートソン(James Robertson)氏が、トルコで撮影したドネルケバブの写真です。この写真が最も古いドネルケバブの写真だと言われています。
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この写真よりも古いイラストも存在します。こちらのイラストは、1850年に描かれたものです。どちらの資料も、最初期のドネルケバブを今に伝える貴重なものです。
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―ドネルケバブの立ち位置
写真やイラストをご覧頂けるとわかる通り、ドネルケバブは野外や軒先で作られる食べ物で、すなわち今でいうところのファーストフードとして誕生して発展しました。今まで紹介してきたケバブは、レストランや家庭で作られる料理なので、ドネルケバブはファーストフード、他のケバブは料理という、そもそもの立ち位置の違いがあります。そのため、先述の3つのカテゴリーには入らなかったのです。
立ち位置が異なるので、当然食べる場所も違います。
トルコでドネルケバブを食べるときは、ドネルジ(Dönerci:日本人の言うケバブ屋と同じイメージ)と呼ばれるドネルケバブ専門店に行く場合がほとんどです。他のケバブは、ロカンタ(Lokanta:食堂)やオジャクバシュ(Ocakbası:炉端焼き屋)、メイハーネ(Meyhane:居酒屋)と呼ばれる飲食店で食べられます。(※一部のロカンタやファミレス的な場所では、ドネルケバブも提供する場合があります。)まるでハンバーガーとハンバーグのようです。
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ドネルケバブは、日本ではトルコ料理として受け入れられ、時には伝統料理とまで言われますが、ここまで読んでいただければお分かりいただけるように、実際には歴史が200年も経っていない新しいファーストフードです。私たち日本人で例えると、たこ焼きのような存在かもしれません。
たこ焼きは、前身である明石焼きやラジオ焼きも含めてファーストフードとして発展してきました。食べる場所(買う場所)は、ほぼたこ焼き店です。たこ焼きは日本の料理ですが、懐石料理と同じ「和食」のカテゴリに入るかと言われると、賛否が分かれると思います。「ドネルケバブをトルコ料理と言われるのは、これと同じ気持ちだ。」と、トルコの方から言われたことがあります。
ドネルケバブとケバブの違い、いかがでしょうか。
そもそもケバブって何と思った方は、ぜひケバブとはをご覧ください。