職業としての地下アイドルの抜粋
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さらにこの活動(地下アイドル)は、自分が何者になれるのかわからなくて悩んでいる年頃の女の子に、一時的に自分は地下アイドルであるというアイデンティティまで与えてくれます。 この本は基本的に、地下アイドルの実態を迫るものですが、地下アイドルとファンとの関係性や、それを支えるSNSの存在などが見える面白い本でした。短いのでオススメです。
もちろん現代の女の子たちが誰しも人気者になりたがっているわけではありませんが、カラオケとプリクラに囲まれて育ち、「SNS」「スマートフォン」「写真加工アプリ」が揃った時、「誰でも有名になれる環境」を社会が準備したからこそ、いまの女の子たちは実際に、有名になるための行動にうつったのです。 近頃の女の子たちの承認欲求が特別に強いわけではなくて、以^前から若者が普遍的に秘めている願望が、スマートフォンやSNSを経由して、ライブハウスに露出しているだけだと考えています。そんな現代の女の子とたちの思いが、地下アイドルの世界に色濃く行動として表れています。
地下アイドルの世界においては、
「承認欲求」=有名/人気者になりたい地下アイドルの欲求
「認知」=ファンが地下アイドルから顔と名前を覚えてもらうことという意味で使われています。 なぜ有名になれる見通しが立たなくても地下アイドルを辞めないのか。なぜ誰も知らないようなアイドルを応援するのか。傍目には理解しがたいこれらの動機は、地下アイドルとファン双方のこれらの欲求にこそあるのです。
省くかもしれないので、ここに書きますが、ファンの行動はとてもユニークです。書籍の中に出てくるアンケートでわかった事ですが、彼らはファン同士での付き合いを重視しますし、ライブ後の飲み会のセッティングも行います。そして、彼らも普通の人間そのものですyo3.icon
なお、一度は認知されても、長くライブに行かないと忘れられてしまうことがあります。このことをアイドル用語で、「認知が切れる」と言うのですが、本来の意味から離れているため、心理学に詳しい友人はこれを聞くといつも笑います。
一般的に地下アイドルとファンの関係は、どちらかの一方通行であると思われがちですが、そこに私が異論を唱えているのは、両者の欲求が鏡合わせになっているためです。
双方の欲求は相手に向いているもので、互いに求め合っていて終わりが見えません。
地下アイドルの子たちは観客から声援をもらったり、物販に会いにきてもらったりすることで承認欲求を満たします。彼女たちの「有名/人気者になりたい」欲求を実現するためには、応援してもらうことが不可欠だからです。
そして、ファンの側にもアイドルの子たちに認知されて、レスをもらいたい欲求があります。応援することが認知に繋がるため、自然と互いに満たし合う関係になるのです。
こうして地下アイドルの現場では、欲求の満たし合いが密に行われています。
職業としての地下アイドルの抜粋