職業としての地下アイドル
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まえがき
中略
2014年に、ランドセルの素材などを製造・販売するクラレが、その春小学校に入学する子と親に対して「将来就きたい職業」に関するアンケートを実施しました。 発表されたアンケートの結果では、女の子部門でその年の2位にランクインした「芸能人・タレント・歌手」が過去最高の13.1%を占めます。中でも具体的なタレント活動として、そのうちの6割が「アイドル」と回答していました(2017年の同調査によれば、「芸能人・歌手・モデル」は2位の12.9%を占めています)。 いま、小さな女の子たちにとっても、アイドルは憧れの対象になっています。
一方、親の同意がなくても、自分の意思でアイドルになれる年齢の女の子たちは、スマートフォンとSNSの普及によって、遊びで自撮り写真をインターネットに公開するようになりました。 地下アイドルでなくても、若い女の子たちは「見る」⇄「見られる」の関係が当然の環境に暮らしているのです。 そんな中、スマホとSNSを宣伝ツールに利用することで、地下アイドル活動を始める女の子たちが現れました。
つまり「アイドル」は小さい女の子にとって憧れの存在でありながら、スマホやSNSを利用できる年頃の女の子たちにとっては極めて身近なものになっているのです。
現在、地下アイドルは数えきれないほどの人数が存在していて、地下アイドルの世界では彼女たちの苦悩や欲望が可視化されています。いま「地下アイドル」文化について考察することは、若者の現状について知ることに繋がると私は考えています。
初めまして。
地下アイドルの姫乃たまと申します。
普段は地下アイドルとしてライブをしながら、こうして文章を書くお仕事もしています。
様々な文化に歴史があるように、地下アイドルというカルチャーにも歴史があって、その歩みは社会の移り変わりを映しています。
特に、地下アイドルの女の子たちは舞台の上やSNSで、日々、若い女性特有の願望を露出しています。地下アイドルの女の子たちとは、現代の若者の姿を映し出す鏡のような存在なのです。
同時に私は、地下アイドルの世界を若者たちの喜びや苦悩や葛藤を見せる拡大鏡であると捉えています。
そのため本書では、現役の地下アイドルに様々なアンケートを実施し、その結果を一般の若者に対して行われたアンケート結果と比較してみる試みを行いました(アンケートにご協力いただいた地下アイドルのみなさま、そのファンの方々とライブハウスの肩がに深謝申し上げます)。
これによって明らかになった、地下アイドルの世界に足を踏みれた若者と、そうはならなかった一般の若者との間に存在する差異ーーあるいは共通項ーーから、地下アイドルのような独特なサブカルチャーを生み出した、現在の若者たちの実相が見えてくるかもしれないと考えて、この本を書きました。
中略
そして、現在の地下アイドルの世界とそこに生きる人たちを考察することで、現代の若者の世界や、文化を知るのがこの本の目的です。これは、ある事情から、私自身がいままでずっと向き合えずにいたことなのです。