仮説思考
https://scrapbox.io/files/6549e3ca7a3b64001c076d6e.png
まだ直属の上司は二名しか経験していないが、それぞれ強烈に推す一冊がある。
いざ物事を決める段階になって、必要なデータがそろっていないことに気づいたりする。
要するに、あらゆる情報を網羅的に調べてから答えを出していくには、時間的にも資源的にも無理があるということである。
十分な材料が集まっていない段階、あるいは分析が進んでいない段階で、自分なりの答えを持つ。
こうした仮の答えを、われわれは仮説と呼ぶ。
無理やりまとめてしまえば、究極的には探索空間を絞る手法と思った。
ポアロもホームズも限られた手がかりをもとに推理を働かせる。
ベイズ最適化のように今持つ所与の情報と経験から確信度の高い空間を探索する。
仮説が外れていれば確信度を更新し、別の領域を探索する。
網羅的なリサーチは全探索ですしどちらが効率的か明白でしょ?
加えて仮説思考は「自らの思考が介在する余地が多い」メリットもあると感じた。
練り上げる材料集めのリサーチのはずが、未熟なリサーチャーの場合、いつの間にか答えを探し出し迷宮に陥る場合もある。
仮説思考は早期から自身の頭で考えポジションを取る。
仮説の産出は企画やらのアイデアを出す知的作業と近しい。
これは本書の中盤「コンサルタントが仮説を思いつく瞬間」にてヤングの「アイデアのつくり方」と近しい記述があることからも窺え、仕事をクリエイティブなものに転換させるマインドセットである。
自身の業務にて仮説思考を活かす場合を考えてみる。
仮説とはお題(課題)に対するアンサーであり、まずは課題を抽出する必要がある。
クライアントからお題を与えられる場合、後は大喜るだけだが、自身の業務自体の場合、そもそも漫然と仕事しているとお題は生じ得ない。
何に思考を方向付ければ良いか分からず途方に暮れ、結果として上司に言われた至近のタスクをこなすのみ。
仮説アイデアをまるで企画のようにクリエイティブに、ウンウン唸って考えるためにはそもそもお題を設定する必要がある。
まずは所与のステークホルダーや仕事内容を書き出してみる。
それぞれの仕事に対して、任意の時期に達成すべきゴールを考えるとそれがお題になる。
担当者として、設定したスケジュールで達成するにはあまりに不確実すぎる要素は肌感として思いつく。
この感覚が仮説の輪郭となる。
そうした肌感や情報、経験をもとに仮説アイデアをひねり出し、実際に検証を進める。
検証は「問題発見の仮説」と「問題解決の仮説」の順に進める。
問題発見の仮説:売上向上のためには、そもそも低迷に関与している可能性の高い問題がある → 検証(調査)
問題解決の仮説:その問題を解決するためには次のような手段がある → 検証(実践)
妄想する頭 思考する手には「検証できるクレーム」の重要性が説かれていたが、同様に「アクションに結びつく仮説」を立てるのが重要である。 本書にて触れていたが「戦争論」クラウゼヴィッツによるとリーダーの資質は先見性(いまわかっている情報で先を読む力)、意思決定(決断する力)、実行力(組織を動かす力)の3つという。
この内、まさに先見性は仮説思考を指しており、翻ってこの思考はリーダーのポートフォリオである。
より深い思索のためには変わらずリサーチの重要性は生きており、有限化を行うリーダーの推進力と深掘るスペシャリストの執念との間で心は揺れる。
---
メモ:思えばコード書く際の設計も仮説だ。仮説を立てないと始まらない