薬物・覚せい剤への世間の誤解
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依存症専門病院で患者を診るようになって驚いたのは、覚せい剤を使ったからといって、誰もが幻覚・妄想を体験するわけではない、という事実だった。それまでいた急性期病棟では、覚せい剤絡みの患者といえばいずれも幻覚・妄想状態を呈していたが、それは、覚せい剤依存症者のほんの一握りの人たちにすぎなかったの 困ったことに大半の覚せい剤依存症患者は、血液検査のデータが正常だったからだ。すでに当時、若い覚せい剤使用者のあいだでは、経静脈的な覚せい剤摂取経路に代わって、経気道的摂取経路(加熱吸煙摂取、いわゆる「アブリ」である) が主流になりつつあり、注射器のまわし打ちによるC型肝炎ウイルス感染は確実に減少傾向にあった。むしろ内臓がボロボロになり、病気のデパートと化しているのは決まってアルコール依存症患者であり、それに比べると、覚せい剤依存症患者ははるかに健康だっ
しかし、またしても私の目論見は外れてしまった。覚せい剤依存症患者の大半は、脳の萎縮など認められなかったからだ。脳萎縮が顕著なのは高齢のアルコール依存症患者ばかりで、覚せい剤依存症患者の多くは頭蓋骨一杯に脳が詰まってい
四半世紀におよぶ依存症臨床の経験を経て確信しているのは、あらゆる薬物のなかでもっとも心身の健康被害が深刻なのは、まちがいなくアルコールであるということだ。実際、アルコール依存症患者の多くが、糖尿病や高血圧、高脂血症といった生活習慣病の塊であり、肝臓や膵臓、心臓の障害はもとより、多発神経炎や脳萎縮のような非可逆的障害を抱えている。それに比べると、覚せい剤依存症患者は、若々しくピンピンしている。実際、臓器障害も脳の萎縮もまったく見当たらないことが多いの わかってない。後に薬物依存症に罹患する人のなかでさえ、最初の一回で快楽に溺れてしまった者などめったにいないのだ。快感がないかわりに、幻覚や被害妄想といった健康上の異変も起きない。あえていえば、多くの人にとってのアルコールや煙草がそうであったように、初体験の際にはせいぜい軽い不快感を自覚する程度だろう。 つまり、薬物の初体験は「拍子抜け」で終わるのだ。若者たちはこう感じる。「学校で教わったことと全然違う。やっぱり大人は嘘つきなんだ」。その瞬間から、彼らは、薬物経験者の言葉だけを信じるようになり、親や教師、専門家の言葉は、耳には聞こえても心に届かなくなる。これが一番怖いの
感想
これはすごく面白かった。へぇ~って感じ。
薬物・覚せい剤への誤解がある