工場地域における被雇用者の自殺要因
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第二章:自殺の地域診断
引用
上位50に入った署轄は、様々な立地条件を有しているが、相当程度の割合で、当該所轄又は当該所轄に近接した地域に、企業の工場等の施設が立地した、いわゆる工場地域が含まれている。そして、工場地域には、中心となっている企業の工場のみならず、下請け企業・孫請け企業を含めた多数の企業が立地していると考えられ、署轄内における被雇用者の法的地位も、中心企業の被雇用者、中心企業に派遣された派遣労働者、下請け企業・孫請け企業の被雇用者、下請け企業・孫請け企業に派遣された派遣労働者等、多種多様であると推測される。
このように、上位50の署轄には、当該所轄又は当該所轄に近接した地域において、「中心企業→下請け企業→孫請け企業」というピラミッド型の構造の中に、多種多様な法的地位を有する被雇用者が存在するというパターンが、相当程度の割合で当てはまる可能性があるといえる。
では、工場地域における「中心企業→下請け企業→孫請け企業」というピラミッド型の構造において、被雇用者はどのような要因によって自殺に追い込まれるのであろうか。
1 長時間労働について
国際的な価格競争を行っている企業は、正社員であっても、人件費を抑制する観点から、サービス残業の常態化や、名ばかり管理職・名ばかり裁量労働の常態化など、労働基準法上違法な状態を放置し、被雇用者に対して長時間労働を強いているケースが少なくない。そして、このような被雇用者の長時間労働は、より経営が厳しい下請け企業、孫請け企業において顕著化している可能性がある。
2 24時間交替制勤務について
大規模工場などは、交替制勤務を採用して、24時間連続稼働をしている場合が少なくないと考えられる。しかし、交替制勤務は、日勤夜勤が頻繁に入れ替わる場合などは、人間本来の生理的リズムを狂わせる可能性もあり、体調の変調を招きやすいと思われる。また、工場が24時間稼働していると、使用者の労働時間管理が不十分となることもあることから、被雇用者は長時間労働に陥るケースが少なくない。
3 人員整理による影響について
国際競争力を維持する観点から、中心企業が大規模な人員整理を行った場合、中心企業の正社員のみならず、中心企業に派遣された派遣社員、下請企業・孫請け企業の正社員・派遣社員に対しても、給与等の労働条件について多大な影響を及ぼす危険性がある。
4 派遣社員の不安定な地位について
派遣社員は、正社員と比較して経済的な安定性を欠くため、収入の減少により消費者金融などから借り入れを行い、多重債務に陥る可能性が高い。また、派遣労働者は、工場が繁忙期に入っている場合には長時間労働に従事する一方、繁忙期ではない場合には他の仕事を掛け持つなど、生活を維持するために、常に長時間労働を行わなければならない地位にいる場合も少なくない。
5 その他の要因について
その他に考えられる要因としては、成果主義の導入、過大なノルマ、流れ作業による単調な労働、単身赴任による孤独感、付近に息抜きの場所が無くストレスを発散できないような立地条件等が考えられる。
感想
地域診断で傾向をみていくと、工場地域・下請け地域が自殺要因にはいってくるという結果は、なかなか衝撃的だった。長時間労働、24時間勤務、人員整理などによる解雇・給与カット、不安定な地位であるための借り入れの発生や長時間労働、などなどがある。派遣って大変だわ。