家内や家人という呼び方
同じくらいの日に下記のツイートを見かけて「家人」という言葉があるのか、と興味を持った。 古代と中世では意味合いが異なっている。
律令法の身分制度により、人民は良・賤(せん)に二大別されたが、賤民の身分は更に、陵戸、官戸、家人(けにん)、公奴婢(ぬひ)、私奴婢の5階層(五色の賤)に区別されていた。
へぇ、今まで知らなかったけれど、同じ家に住む人として「家族」のような意味合いもあるし、身分として「使用人」みたいなニュアンスでも使われる言葉なんだな。 日銀の黒田東彦さんの発言における「家内」というのは、会話相手が「奥様」と別の言葉で指しているところを見るに「配偶者」のことを指していると考えて間違いなさそう。 伊藤公紀さんのツイートにおける「家人」は「配偶者」のことかもしれないし「使用人」のことかもしれないけれど、家人という文字列を含む他のツイートもあわせて見てみると「配偶者」に近い関係の相手の話に思えた。 「スーパーでの買い物」も「衣替え」も、いわゆる「家事」に分類されるものだと思うので、そういったことを担当する人を指すときに「家」という漢字を含む「家内」「家人」という呼び方を用いるのは一貫した態度に見える。 ----
ぼく個人のスタンスについては配偶者の呼び方のページに複数回に渡って書いてきた。 ぼくから「家内」「家人」という呼び方が自然に出てこないのは、妻のことを「家の人」とは捉えていないからだろう。妻もぼくも同じように社会の一員であり、家族の一員として家事は分担しているし、家事を担当する専任の人は我が家にはいない。「嫁」という言葉にも「家」のニュアンスを感じるので、自分の中では「家内」「家人」に近い位置付けかもしれない。 特に「家人」は身分のニュアンスを含みそうなので積極的に選択したい言葉ではないな、と思った。「妻」や「家族」という言葉で事足りる。歴史的に身分のニュアンスを含むという意味では、家人はソフトウェア業界の slave という表現に近いところがある。 家庭における各個人の役割がフラットになっていくと、家内や家人というのは、文字通りに「ホームヘルパー」のような職業人に対するラベルに変容していくかもしれないな、と思った。