自分は「メタ認知」をどのようなものだと捉えているか
https://open.spotify.com/episode/5SmznLmm7c279H06hDJi0i
Teacher Teacher のポッドキャストのエピソード 53 を聴いていて「自分はメタ認知がなんなのか、やっぱりよくわかっていない気がする」と感じたので、あらためて整理してみることにした。 メタ認知とは何か
教育の本質的な目標は自らの力で自分を成長させられる術と、幸せな状態をつくり出せる術を学んでもらうことだと第1章で書きました。その両方の実現に不可欠な「状態」が心理的安全性であり、不可欠な「スキル」がメタ認知能力です。
メタ認知(metacognition)という概念は、認知心理学の領域で生まれたものです。メタとは「高次の」という意味ですから直訳すれば「(自分の)認知自体の認知」。簡単にいえば「自分を知ること」です。メタ認知能力が高い人ほど自分の特性や癖を正確に把握できるため、目標達成能力や課題解決能力が高いと言われています。
メタ認知の明確な定義は研究者によってマチマチではありますが、私なりに定義するメタ認知とは「自己を俯瞰的に捉え、自己について学ぶ機能」のことです。
── 工藤 勇一; 青砥 瑞人. 最新の脳研究でわかった! 自律する子の育て方 (SB新書) (p.111). SBクリエイティブ株式会社. Kindle 版.
ここに書かれている「自己を俯瞰的に捉え、自己について学ぶ機能」という説明は「なんかわかる、そうかも」と思った。
John Flavellの1976年の論文「Metacognitive Aspects of Problem Solving」では、メタ認知は次のように説明されています。
メタ認知の定義
Flavellはメタ認知を「認知についての認知(knowledge about cognition)」と定義し、具体的には以下の二つの側面に分けて説明しています。
1. メタ認知的知識(Metacognitive Knowledge):
•自分自身の認知プロセスや他人の認知プロセスについての知識。
•認知活動に影響を与える要因や条件についての知識。
•例: 自分がどのような状況で集中力が高まるか、どのような学習方法が効果的かを理解すること。
2. メタ認知的経験(Metacognitive Experiences):
•認知活動中に生じる意識的な経験や感覚。
•具体的なタスクや問題解決の過程で感じる気づきや反省。
•例: 問題を解いている途中で自分が正しい方向に進んでいるかどうかを感じ取ること。
メタ認知の機能
Flavellはメタ認知が以下のような機能を持つと説明しています。
1. 計画(Planning):
•タスクを達成するための戦略を立てるプロセス。
•例: 試験勉強を始める前に、どの範囲をどのように勉強するか計画を立てる。
2. 監視(Monitoring):
•認知活動の進行状況をチェックし、適切かどうかを確認するプロセス。
•例: 課題を解いている最中に、自分が正しい解答を出しているかを確認する。
3. 評価(Evaluating):
•認知活動の結果や効果を評価し、改善点を見つけるプロセス。
•例: 試験が終わった後に、自分の勉強方法や解答を振り返り、どこを改善すべきかを考える。
メタ認知の重要性
Flavellは、メタ認知が学習や問題解決において重要な役割を果たすことを強調しています。メタ認知が発達すると、個人は自分の認知プロセスをより効果的に管理し、自己改善が可能になると述べています。
このように、Flavellの論文ではメタ認知が自己の認知活動に対する意識と制御のプロセスとして説明されており、学習や問題解決における重要性が強調されています。
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ここまでの情報をもとに、自分の考えを整理してみる。ここで「認知の仕方」と「認知の対象」の 2 軸を導入し四象限に分けて考える。 John Hurley Flavell さんの定義に倣って「メタ認知は、認知についての認知」ということにすると、表の (3) と (4) は「メタ認知である」と言えそうだ。人々の間で認識にズレが生じがちなのは (2) だと思っていて「物事を俯瞰的に見る」は、ぼくは「メタ認知ではない」と捉えているんだろうな。おまけとしていちおう (1) にも言及しておくと、これはほとんどの人にとって「メタ認知ではない」となっていると思う。 https://gyazo.com/d3a7db4a42d1e7871bfef0eb386e5fd4
たとえば「よく晴れている」という事象があったとして。下記のような分類ができそう。
自分が「いい天気だな〜 気持ちがいいな〜」と思う ← 主観のひとつ
雨を待ち望んでいる人が「うわあ、今日も晴れかよ」と残念がっている、のを知る ← 客観のひとつ
日焼けを避けたい人が「こんな日は外を歩けないわ」と困っている、のを知る ← 客観のひとつ
「自分にとって、いい天気ってのは晴れのことで悪い天気ってのは雨のことだな、なぜなら…」と認識する ← メタ認知
「なにがいい天気でなにが悪い天気かは人や状況によって異なるから、他者とやりとりするときには注意が必要だな」と認識する ← メタ認知
「複数の客観を集めてそれらを俯瞰するとメタ認知に至りやすくなる」ってのも言えると思っている。物事や事象を俯瞰するだけでは不十分で、そこから「自分や他者の認知についての気付き」を見つけられたら、それがメタ認知と呼べるものである。と、自分はそんな整理をして納得した。少なくとも 2024-06-05 ではそういう認識。 https://gyazo.com/1b2e3ec4f304da3207326aaf27320230
やっぱり難しいのは先の四象限における (2) で、ぼくはこれをメタ認知とは呼ばないけれど、定義や解釈のちがいでこれをメタ認知と呼んでいる人もいるっぽいことを観測していて、なので、他者との会話の中ではあまり積極的に「メタ認知」というワードは使わないでおこう、と思っている。別に定義や解釈を戦わせたいわけではなくて、その先にある対話を楽しみたいだけだもんね。