大喜利
今日における「大喜利」は、おおむね「司会者が出す《お題》に対して、複数の回答者が、当意即妙に洒落の利いた回答をして面白さを競う」といった遊び・余興・演目、を指す意味で用いられる語。このイメージはテレビ番組「笑点」の影響を色濃く受けて成立しものである。
もともとの「大喜利」の意味は、寄席の余興として生み出された、その日の寄席の最後に行われる演芸形式である。トリが不在の際に、トリに代わる最終演目として、現代でいうところの観客へのアンコールに相当するサービスとして大喜利が行われた。その日に出演した寄席の出演者複数が再登場し、観客からお題をもらったうえで、そのお題に沿った芸を披露し出演者同士で競い合った。
本来の「大喜利」は、歌や踊りなどの音芸、指定された3つのワードをちりばめた物語を作る三題噺、果ては出演者による相撲など、多種多様なジャンルが含まれていた。観客のリクエストに応じて何でもやったわけである。
テレビ番組『笑点』のコーナー「大喜利」を通してこの語が世間に広く知られたため、近年のテレビ番組やインターネット上などで行われる「大喜利」は、司会者の出題に対して、ひねりを効かせて答える、といった言葉遊びゲームの集合そのものを指すことが多いが、本来この形式のものは、様々な大喜利のうち「とんち」と呼ばれるものである。
元来の大喜利ではこの他に、歌や踊りの披露、三題噺、にわか(即興の芝居。数人の芸人が幽霊に扮して登場する道具入りの怪談噺など)、芸人による相撲、裁判の真似事など、趣向を凝らしたさまざまなものが行われている。
大喜利の語源は、歌舞伎の「大切り」に由来すると言われている。江戸時代の歌舞伎脚本は2部構成が一般的だった。具体的には、1部が一番目狂言(時代物)、2部が二番目狂言(世話物)から構成され、1部の最終演目のことを「大詰め」と呼び、2部の最終演目を「大切り」といった。この「大切り」にあやかって、寄席においても最後の演目を意味するようになったと考えられている。歌舞伎と漢字が異なるのは「客も喜び、演者も利を得る」ということから「喜利」という当て字を使うようになったという説が有力である。
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