諏訪式
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小倉美恵子
亜紀書房 (2020/9/26)
長野県の諏訪は諏訪湖を中心に八ヶ岳や霧ヶ峰も含む広大な地域。諏訪湖は中央構造線とフォッサマグナが交わるところ、まわりには縄文の時代から人が暮らし、諏訪信仰がいまも息づく。江戸時代の繰越汐による新田開発、近代に入ると片倉製糸が栄華を極め、その後、東洋のスイスと言われるほど、精密機械の会社が数多く興った。―セイコーエプソン、ハリウッド化粧品、ヨドバシカメラ、すかいらーく、ポテトチップスの湖池屋、岩波茂雄、島木赤彦、新田次郎、武井武雄、伊東豊雄…。ただならぬ場所、諏訪の地力を、丹念な取材で掘り起こす歴史ノンフィクション。 https://gyazo.com/ecde4d276d470f245a9357fafa4048c9
「どんなにたくさん、色々のことを暗記して良い成績を取り、その人が世の中に出て出世したところで、試験のために無理に詰め込んだ知識は、やがて忘れてしまうだろう。しかし、少年期に自分の力で考え、苦しんでみて初めて得る知識は、おそらくその人の生涯を通じて決して滅びることはないだろう」p230
「将来必要だからこれを覚えておけ、あれもやっておけと、まだ、食欲も出ないうちから、食物を与えるから、いわゆる『詰め込み主義』の教育という変態的なものができるのである。それは彼らの腹を壊す以外のなにものでもない」p231
「地理学とは、大気と大地の接触現象を正しく理解する学問なんだ。そうだ。地理とは、どこの国が人口いくらあって、首都がどこで、産業はどうだこうだ、という暗記ものではないのだぞ。まず自分を見つめろ。」p231
私は科学なるものはなにも自然を制服するために起こったものとは考えていない。科学の職能は自然を理解し、自然の真相をきわめ、その自然の偉力を礼賛し我ら人類はそのすべてをあげてそれをその大自然の中に投げ込み、巧みにその大自然に調和し巧みにその大自然を背景とし、否、まったくそれに合致して活動するべき点にあると信じている。p236
満州事変のころ「今日、地方の疲弊は相当深刻である。地方の持つ文化が、その地方の風土性に立脚することを忘れて、いたずらにいわゆる都市文化を追従してきた結果であり、地方性に即した文化の建設ということが、もっとも正しい地方振興の意義」p246
風土 風土ハ大自然である 大自然風土 その風土に正しく生きて居る人によってこそ 初めて真にその風土を生かし得ることができるのである 引用
今を生きる人間だけが「世の中」を作っているのではない。先人の智慧や思いは風土に刻まれ、耳を澄ませば聞こえてくる(p255)
Quotation
2021/2/12読了
風土。響きの良い、とても大切な言葉がここにあった。三澤勝衛の風土に根ざした教育、諏訪の風土がそれを導いてくれたと言えるし、このやり方そのものが今こそ必要な視点なのだろう。在野研究者という言葉も知ることができた。縄文文化が栄え、数々の偉人たちが生まれた諏訪。八ヶ岳を挟んでそのすぐ近くで暮らす私たちにとって、次の展開が非常に楽しみになったし、清里の風土、開拓の時代、ポール・ラッシュ、KEEPといった脈々と流れている風土を肌感覚として理解した上での活動が大切だろう。