東宝/スバル
東京高判昭和26年9月19日・昭和25年(行ナ)第21号〔東宝/スバル〕高民集4巻14号497頁、審決集3巻166頁
要所の抜粋
勘所
市場画定
原告は、映画興行について地域の点から一定の取引分野を構想すべきものとすれば、丸の内、有楽町界隈または銀座地区ではなく、旧東京市内がほぼこれにあたると主張しているが、丸の内、有楽町界隈には、原告主張のような条件があるため、観客が都及び近郊一円より参集するという意味では、少くともここに参集する観客の一部は、この地域外の他の映画館と共通の対象となり、従つて旧東京市内の地域が一定の取引分野となり得る場合のあることは否定し得ないけれども、一般通常の状態においては、映画興行の取引分野としては旧東京市内より狭い地域について考えるのが相当である。すなわち、映画館の多数がある地域に近接して存在するときは、おのずからその地域に集合する観客群を生じ、これらの観客群は通常この地域内で、それぞれの映画館を選択して入場することとなり、この地域内の興行者は、この観客群を共通の対象とすることとなる。このように解すると、旧東京市内よりも狭い地域に映画興行の一定の取引の分野が成立するとみるべきであるから、この点に関する原告の主張は失当である。
上記テキストの画像
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shiraishi.icon 需要者の範囲を画定して、それから供給者の範囲を画定している。当時はそのような枠組みが言語化されていなかったが、枠組みが言語化されていなかった最初期の事例でもその枠組みに従って市場画定がされていることが興味深い。