事例解説アウトライン2020-12-03
東京高裁判決書のうち14頁以下(ルビコン主張)と17頁以下(ニチコン主張)を特に取り上げる。
これらの争点はいずれも、アルミ電解コンデンサの被疑行為に関するもの
アルミ電解コンデンサ
タンタル電解コンデンサ
これらの争点はいずれも、違反要件・課徴金要件のいずれであるとも言える。
ハードコアカルテル(不当な取引制限)に関する規定
違反要件
2条6項
課徴金要件
7条の2第1項
令和元年改正後第1号のうち、次のものは、令和元年改正前から同じ
「当該違反行為…に係る一定の取引分野において当該事業者…が供給した当該商品又は役務…の政令で定める方法により算定した、当該違反行為に係る実行期間における売上額」の「百分の十」
違反要件に関する議論と課徴金要件に関する議論は、多くの点で重なる
「当該商品又は役務」は、違反要件が成立する範囲をファインチューニングする規定
「実行期間」の終期は、通常、違反行為終了日の前日
14頁以下
ルビコン:自社が参加表明した範囲より広い範囲の商品役務について合意が認定されている
判決:広めとなることはある。特定範囲が除外されていることを示す必要がある。
17頁以下
違反行為の終了
特定違反者の離脱
岡崎管工東京高判
調査開始日前減免申請をし、営業担当者に中止を指示
全体の終了
合意の破棄
それ以外の外部要因
公取委の立入検査
それ以外
先例(抽象レベル)
上記「それ以外」があり得ることを否定していない。
公取委審判審決平成 19 年 6 月 19 日・平成 15 年(判)第 22 号・審決集 54 巻 78 頁〔ポリプロピレン課徴金日本ポリプロ等〕
公取委審判審決平成21年11月9日・平成16年(判)第3号・審決集56巻第1分冊341 頁〔モディファイヤー〕
東京高判平成 22 年 12 月 10 日・平成 21 年(行ケ)第 46 号・ 審決集 57 巻第 2 分冊 222 頁〔モディファイヤー〕
先例:市場シェア過半の違反者の減免申請により他の違反者の関係でも違反行為終了とした事例
公取委排除措置命令平成 29 年 3 月 13 日・平成 29 年(措)第 6 号〔壁紙〕(サンゲツ)
公取委排除措置命令平成 30 年 2 月 20 日・平成 30 年(措)第 6 号〔NTT 東日本等向け作業服〕(双日ジーエムシー)
本件
平成23年3月の東日本大震災による日本ケミコンの生産能力喪失を、大きな市場シェアを持つ者の離脱と同様に評価できれば、終了と言えるかもしれない。
判決:平成23年5月に完全復旧宣言など
情報交換活動の途絶
判決:途絶したとは言えない旨の認定
平成23年8月19日以後の頃の話(「値下げも辞さない」)
判決:「値下げ合戦は避けるよう併せて指示」
震災直後のヘルプ要請の部分
判決:本件合意の範囲内。ニチコンの売上げである以上、ニチコンに課徴金(22頁)
23頁以下
「P」社に対して命令がないことについて
ニチコン等への命令は違法か
「差別的意図」がなければ違法でない(24頁の下8行目)
「P」社は違反か
地裁判決(地裁判決PDF42頁)
証拠(乙共18)によれば,《P》の担当者はマー ケット研究会に出席しているものの,その発言内容は,ドル建て,ユーロ建ての外貨取引等,欧米やアジアに所在するアルミ電解コンデンサの需要者等に関するものが多くの部分を占めることが認められ,《P》は,アルミ4社と比べて,日本国内の需要者等に対するアルミ電解コンデンサの販売数量は多くなかったものと推認することができる。加えて,《P》がマーケット研究会以外の会合に参加して,日本国内のアルミ電解コンデンサの需要者等に提示する具体的な販売価格について話し合うなどしていたことを認めるに足りる証拠はない。そうすると,被告が《P》とアルミ4社とを 別異に取り扱ったことが不合理とはいえないというべきである。