事例解説アウトライン2020-07-22
2021-01-20(東京地裁判決のみがある段階)
プリンタのアフターマーケット事案が他にも複数、存在する模様であるなど、実務的にも理論的にも注目される。
おことわり
概要
プリンタメーカーが、自社プリンタに関するアフターマーケット(本件ではトナーカートリッジ)について他者排除行為をして独禁法に違反しているかどうかが問題となった事例。
法的には、プリンタメーカーによる特許侵害訴訟に対する抗弁として独禁法が持ち出されている。
公表PDF79-105頁
独禁法21条は、多くの特許権に関する確認規定。例外的な特許権の場合は普通に独禁法が適用される。
アフターマーケット事案では一般指定14項が適用されるのが「お約束」となっているが、排除効果があること、正当化理由がないこと、が適切に認定される必要がある。
前提となる考え方84-86の(2)(86頁3行目まで)
本件の具体的行為
再生品トナーカートリッジの場合には、プリンタ本体の残量表示として「?」の表示が出る。
市場画定
広い市場画定
プリンタと消耗品を総合した「システム全体」
狭い市場画定
「リコーのC830シリーズ及びC840シリーズのプリンタのためのトナーカートリッジ」
排除効果
本件特許権は必須か
「?」の表示があると再生品を販売できないか
「品質」86-88のイ
価格
印字品質・故障の原因にならないという意味での品質
→ 88のウで「?」の表示がもたらす影響
キヤノン事例「カートリッジフセイ」との比較
本件における需要者
「?」の表示の影響
「予備のトナーカートリッジを常時用意しておかなければならず、トナー残量の表示がされる場合に比べ、本来不必要な保守・管理上の負担をユーザーに課すこととなる」(88頁)?
官公庁の問題は、末尾でまとめて
正当化理由
通常は残量表示をすることの合理性・必要性
他のプリンタメーカーとの競争
再生品トナーカートリッジには残量表示をしないことの合理性・必要性
判決は、再生品トナーカートリッジにはE&Qマークが付されていることを強調し、控訴人が主張するような再生品の充填量の区々な例はいずれも一部の例に過ぎない旨を述べ、「リサイクル事業者が、原告製品に充填されるトナーの規定量と同量のトナーを再充填」するという理解を前提として、控訴人の主張を退けているように見える(95-98頁)
E&Qマークがいう「印刷枚数が純正比90%以上」とは何か
一定量の再生品トナーによって印刷できる枚数(の同量の純正トナーによって印刷できる枚数との比率)であるのか
トナーカートリッジにどのような品質のトナーがどれほどの量だけ充填されトナーカートリッジ全体としてどれほどの枚数を印刷できるか(の純正トナーカートリッジの総印刷枚数との比率)であるのか
E&Qマークが付されているが残量に問題のあるものが少しでもあればユーザの信頼に影響する可能性
E&Qマークのない再生品トナーカートリッジが多数流通しているとすればどうか
判決は、「仮に、E&Qマーク等を得ている再生品のトナー残量表示が不正確であるとしても、それによりユーザーの信頼を失うのは、当該再生品を製造、販売したリサイクル事業者自身であって」としている(97頁)が、どうか。
品質管理・改善の合理性・必要性 98-103のウ
官公庁による調達 81-82のケ、89-90のオ
官公庁は「?」の表示が出る再生品を買わないか
いかに官公庁であっても、特定の需要者が残量表示のされるトナーカートリッジを望むのであれば、それで供給者側が法的責任を問われる筋合いではないのではないか