セミナー資料2026-01_01
下記の要約
規範(一般論)として、2条4項の「競争」の定義により、複数の事業者に供給可能性が必要。
事実として、1社にしか供給可能性がなかったら、違反なしとなるが、
事実として、複数の事業者に供給可能性はあったと認定された。
命令取消訴訟東京高判は、規範(一般論)として何か違うことを言っているか?
仮想事実として、発注者(本件ではJR東海)が依頼した事前検討をしていなければ入札(本件では指名競争見積)で落札して適切な商品役務を供給することはできない、とする。
そうすると、独禁法2条4項の「競争」があるか否かが問題となる。
独禁法2条6項の「不当な取引制限」の定義では「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」を満たす必要がある。
④ この法律において「競争」とは、二以上の事業者がその通常の事業活動の範囲内において、かつ、当該事業活動の施設又は態様に重要な変更を加えることなく次に掲げる行為をし、又はすることができる状態をいう。
一 同一の需要者に同種又は類似の商品又は役務を供給すること
二 同一の供給者から同種又は類似の商品又は役務の供給を受けること
本件刑事判決(東京地裁、東京高裁)
独禁法2条4項の「競争」が存在する必要がある。
事前検討をしていなくても施工は可能。
公取委の動き
排除措置命令(大成建設と鹿島建設は売上額がなく課徴金納付命令なし)
命令取消請求は公取委が被告。
公取委は、2条4項について、検察当局はしないような主張を開始。
本件(命令取消請求事件)東京地裁判決
独禁法2条4項の「競争」が存在する必要がある(地裁判決書85頁)
事前検討をしていなくても施工は可能(地裁判決書85〜109頁)
本件(命令取消請求事件)東京高裁判決
公取委の主張(7〜9頁)
一定の取引分野における競争機能が損なわれれば違反(多摩談合最高裁判決の判示を意識していると思われる)。「競争」が「実質的に制限」されることは不要。
shiraishi.icon最高裁判決の文言を利用して言葉を言い換えて、2条4項から遠く見えるところに議論をずらそうとしているだけ。実質は同じ。
2条4項の「競争」は供給可能性があれば足りる。工事に関する専門的知見は不要。
shiraishi.iconもとより、そのとおり。
仮に、特定の事業者だけが落札できる状態でも、当該特定の事業者は、他の事業者がいれば、疑心暗鬼になり価格を下げるであろう。それが「競争」である。
shiraishi.icon公取委が言いたいのは、客観的には他の事業者に供給可能性がなくても、「特定の事業者」がそれを知らないなら、疑心暗鬼になって価格が下がるので、それも「競争」であるということであろう。(そのような「競争機能」を意思の連絡によって損なわせた、という論法)
shiraishi.iconそのような形で価格が下がることがあるとしても、それは2条4項の「競争」とは言えないのではないか。(あくまで他の事業者による供給可能性が必要ではないか。)
特定の事業者だけに供給可能性があったとすれば、本件合意の前後の情報交換によって情報入手インセンティブが減少していたからである。
shiraishi.icon事実認定の問題
東京高裁判決(13〜16頁)
最後に(16頁)、「なお」として、仮に、2条4項の「競争」があるというためには「ある程度現実的な供給可能性が必要」としても、として、地裁判決の、事前検討をしていなくても施工は可能という旨の判断(地裁判決書85〜109頁)につなげている。
その前に、次の論を述べている。
2条4項の「競争」があるというためには、複数の事業者に実質的な供給可能性が必要(14頁中頃まで)
shiraishi.icon異論なし
多摩談合最高裁判決(平成24年判決)によれば、競争機能が損なわれればよいので、
そうすると、ここで、実質的な供給可能性が認められるためには、本件で問題となる一定の取引分野のうち、個別の工事について事業者が具体的・現実的に供給可能である必要はなく、そのうち、一部であってもその供給がされないことで一定の取引分野全体の競争機能を害し得る程度に実質的な供給可能性が認められれば足りるというべきである。
公取委命令における一定の取引分野
リニア中央新幹線に係る地下開削工法による品川駅及び名古屋駅新設工事の取引分野
shiraishi.icon
これは、「一定の取引分野」の中に、例えば、大林組しか供給できない部分(品川駅)と、大成建設しか供給できない部分(名古屋駅)があるとすると、個別工事ごと(例えば品川駅のみ)に見るのでなく、全体(品川駅と名古屋駅を総合したもの)で見るべき、という論。
供給可能性がある供給者が1しかないセグメントを、複数、人工的に集めて一つにすれば、「競争」があることになる。議論として不適切。
合意や情報交換(「3社会合」=清水建設を除いた3社で頻繁に行われていた……地裁判決随所)がなかったらどうであったかを考えるべき(15頁上半分)
shiraishi.iconもとより、そのとおり。
低品質でも供給できればよい(15頁②は結局その趣旨か)
shiraishi.icon 独自の見解
合意や3社会合がなかったら、JR東海から情報を得られ、供給可能性が生じたはず(16頁)
shiraishi.icon事実認定の問題
(参考)実際の受注状況(取消訴訟地裁判決の認定による)
品川駅
事前検討=大林組
南工区=大林組が受注
北工区=清水建設が受注
名古屋駅
事前検討=大成建設
「中央工区」について工区の分割等がされ、
中央西工区=大林組が受注(大成建設と競争)
中央東工区=ジェイアール東海建設が受注(特命随意契約)
受注者名は、81頁で「R」とされているが、報道等で公知。
(参考)減免申請
大林組と清水建設が減免申請
減免申請による刑事免責(教科書どおりの)ではないが、個人について、大林組と清水建設は起訴の対象とされていない。