2019A 他者排除
2019-10-10(後半)①、2019-10-15②、2019-10-17③
8k126-130, 150-187
(講義2回分ある)
他者排除をめぐる違反要件の構造
①のあとのリアクション
競争関係必要説と競争関係不要説
取引拒絶系
JASRAC事件
略奪廉売系
②のあとのリアクション
Intel事件
抱き合わせ
不正手段
アフターマーケット
他者排除をめぐる違反要件の構造
行為要件
competition on the merits では説明できないもの(「人為性」)
弊害要件
排除効果
市場閉鎖効果(主に取引拒絶系で使われる言葉)と同義
市場から完全に排斥される必要はない
蓋然性で足りる
他の場で生き残れるか否かは関係ない
競争変数が左右される状態がもたらされることが必要か
(原則論貫徹説と排除効果重視説)
残った者が十分な競争をする場合
検討対象市場で行為者の市場シェア等が大きくない場合
US
EU
日本
正当化理由
因果関係
①のあとのリアクション
受動的販売の禁止が,ビジネス戦略としてどういう意味を持つのかわかりませんでした。
非常に基礎的な事実関係の確認なのですが、授業で具体例としてあげられていた、トヨタ、資生堂、花王の例において、本社と制限を受けている支店の関係はどのようなものでしょうか。大会社の一部であるならばそもそも別の法人格が観念できないため、競争法の対象にそもそもならないと思ったのですが。
楽天トラベル等の旅行代理店サイトのMFN条項に関しての意見です。こうした条項により、意思の連絡がないものの結果的に価格に下限が生じる弊害が起こる、との説明でしたが、これらの代理店が行為要件への抵触を避けるために、他の代理店が同様の条項をとりつけることを予測しながらMFN条項を約したという可能性はありうるのでしょうか。すなわち、ハードコアカルテルとして制裁を受けることを回避しつつ、価格硬直の帰結を誘発する行為だったのでは?
輸入代理店における正規代理店制度は、どのように位置付けられて正当化されているのか、少し気になりました。
「競争関係がある状態」というのがよく分かりませんでした。これは抽象的な概念なのでしょうか。それとも何か厳格な定義があるのでしょうか。また、「競争関係がある」かどうかの判定は具体的にどのように行われているのでしょうか。
(①の最後に下記項目を少し説明したので、その関係の質問か)
競争関係必要説と競争関係不要説
議論なし
法域間で顕著な差が存在するが、自法域の考え方が当然と考えられているためか論点として意識されていない。
米国:競争関係必要説
EU:競争関係不要説
例は多数
日本:競争関係不要説
例は多数
競争関係必要説の論拠
「競争関係がないのに排除するということは、それなりの理由があるからであるはずだ」
競争関係不要説の論拠
搾取規制を行うか否かの問題と通底
行為要件
取引拒絶に準ずるものも含む
2x2
「市場閉鎖効果」
被排除者にとって代替的な競争手段がない、という要素が重要
間接ネットワーク効果
正当化理由
不適切なものの排除
知的創作や投資のインセンティブ確保
事案
排除効果に関する判断
経緯は省略するが最高裁には排除効果の成否の論点だけが上がってきた。
最高裁判決の判断内容
事実上の独占状態にあり、参入は困難であって、ほとんど全ての放送事業者は上記の内容の契約を行為者と結んでおり、競争者との取引が抑制される状況にあった。
多くの音楽は相互に代替的な関係にあり、放送事業者が行為者の音楽を選べば競争者の音楽が選ばれなくなるという関係にある。
7年余。
コスト割れの有無が問題となる
価格設定の安全領域の確保
行為要件
コスト割れ(コスト>価格)
行為者のコストと行為者の価格を比較する
コストが高く算出されるほど違反となりやすい
コスト=可変的性質を持つ費用
原則として変動費のみ(固定費は含まない)
会計的には固定費とされる広告費や人件費でも、その安売りのためだけに使われたものはカウントする
弊害要件
排除効果
正当化理由
公共性
②のあとのリアクション
取引拒絶、略奪廉売を区別する理由として、要件の違いを挙げられていたが、取引拒絶の場合は(特にアメリカにおいては)立証するのが難しく感じられた。この認識が正しければ、この2類型の差は他者排除という別類型だから異なるのが当然であって気にしなくて良いと見るべきなのか、それとも同じ他者排除の類型なのでこの不均衡は期待できる救済や罰則の差で埋められているのか。
最近話題のQRコード決済事業者が明らかに決済手数料を上回るような還元キャンペーンを行っている状況は、略奪廉売の行為要件に当てはまらないのか気になりました。今の所、特に公取委が動いたといった報道も目にしないのですが、特に問題とされていないということなのでしょうか。
Intel事件
略奪廉売系か取引拒絶系か
相手方におけるIntelシェアを条件としている場合
排除効果
contestable - uncontestable
平成4年 ドラクエⅣ事件 ドラクエⅣと不人気ソフトの抱き合わせ
公取委 不人気ソフト競争に影響、という論法
Tying in Boston
他者排除型と不要品強要型
米国では他者排除型が中心
Jefferson Parish Hospital District No.2 v. Hyde (1984)
EUでは(昔はそうでもなかったはずだが)1990年代以降?に米国の影響で他者排除型が中心的に論ぜられる。
日本では、ドラクエⅣ事件の反省を経て、分離する考え方が一応は定着
不要品強要型は優越的地位濫用(搾取)の問題
行為要件
従たる商品役務を特定の者から買うことを条件として主たる商品役務を供給する
物理的
契約的
2つの商品役務といえるか
別々の需要があるか否か
米国では(抱き合わせ関係では)正当化理由の主張が認められにくいので(抱き合わせに関する当然違反ルール・・・詳細略)、行き場を失った正当化理由の主張が2つの商品役務といえるかの論点に漂着
排除効果
取引拒絶系と同じ。
正当化理由
USで「2つの商品役務といえるか」と議論されるようなこと
安全性確保
不正手段(教室では省略)
「取引妨害」
日本には、一般指定14項という、キャッチオール条項(しかも不正手段にも使われ得る)が存在する。
不正手段型行為
物理的妨害
虚偽の事実の告知流布
排除効果必要型行為
DeNa事件(平成23年)
ジャニーズ事務所に関する報道(これだけ若干触れる)
一定以上の長い期間にわたり用いられる商品役務とアフターマーケット商品役務
エレベータとメンテナンス
プリンタとインク
行為要件が問題となる例
ハイン対日立ビルシステム
排除効果(市場画定)が問題となる例
多数
正当化理由が問題となる例