企業結合規制(基本解説セミナー資料)
#セミナー資料
#基本解説セミナー資料
2025-07 公正取引協会セミナー
概要
https://stjp.sakura.ne.jp/_presen/keynote/MergerReview_detailed2.jpeg
企業結合規制とは
もし企業結合行為が行われたならば弊害が起こる蓋然性がある、という場合に、企業結合行為を事前に禁止する。
事前の企業結合審査 → 事前届出義務
届出前相談が主な舞台となることが多くなっている。
令和6年度企業結合事例の掲載事例のうち、届出義務があったものは、全て、届出からクリアランスまで30日以下。
行為要件
行為要件を満たせば、事前規制の対象となる
さらに規模の要件を満たせば事前届出義務
行為要件 → 各条の1項
日本では企業結合行為が複数の条による縦割りとなっている
会社による株式取得(10条)
役員兼任(13条)
会社以外による株式取得(14条)
合併(15条)
共同新設分割・吸収分割(15条の2)
共同株式移転(15条の3)
事業譲受け等(16条)
受け皿条項(17条)
どれに該当しても、他の違反要件は同じ
届出義務の要件が異なる。
→ 届出義務の基準の違いに応じて条を分け、それに違反要件規定(各条の1項)が帯同している、というイメージ。
弊害要件
[再掲]企業結合規制とは
もし企業結合行為が行われたならば弊害が起こる蓋然性がある、という場合に、企業結合行為を事前に禁止する。
企業結合後の状況を企業結合前に判断するのであることを「こととなる」で表現
基準時は企業結合後
企業結合前の現在の状況を検討しているのは、現在の市場の状況が企業結合後もそのまま維持されることを暗黙の前提としているから。
上記の暗黙の前提が通用しない事例では、将来の状況が特に考慮される。
将来において上市される。
将来において市場環境が変わる。
過去の出来事が参考とされることもある。
例:過去に協調的行動(一斉価格引上げなど)がしばしば起きたことが、将来における協調的行動を予測させる。
条文:「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる」
以下では、これを小分けにする。
市場画定(一定の取引分野の画定)
需要者・供給者・商品役務 から成る
https://gyazo.com/9b7813fe561c407fd1f3919b620a9310
需要者からみて選択肢となる供給者の範囲
選択肢となる供給者が同じである需要者の範囲
通常の教科書的パターン
当事会社が競争関係にある商品αがあり、それと似ている商品βがある、という場合に、αだけで市場が成立するか、αとβであわせて1個の市場が成立するか
https://gyazo.com/b7cd44e88e7c84d4e8e0e1be09e0cca5
需要の代替性
需要者にとっての(現状での)選択肢の範囲
供給の代替性
現在は選択肢となっていない供給者がどこまで食い込めるか
事例集の事例によくあるパターン
(教科書的には、αにβが加わるか、という感じで解説されることが多いが)
実際の事例では、まずは一体とみられがちなもの(α+β)が、αとβに分かれるか否か、という角度からの記述となっていることが非常に多い。
以上は、一応は、商品役務の範囲
地理的範囲
考え方は商品役務の範囲と同じはず
世界中の教科書で商品役務の範囲と地理的範囲がある、と書かれているので、仕方ないから毎回触れるお約束、という感じの記載が多い。
結局、
「需要者からみて選択肢となる供給者の範囲」が唯一最大の基本的考え方
他は、そのもとで色々言われている派生的基準
商品役務の範囲と地理的範囲の二分法
SSNIP
など
競争を実質的に制限することとなる
企業結合行為を行ったら競争の実質的制限が起こる蓋然性が高まる。
(1) 企業結合行為を行ったら、懸念される行動が起こりやすくなる
(2) 懸念される行動が本当に起こったら、競争の実質的制限が起こる
これらは、全体として判断すればよい(一つ一つに立証責任は発生しない)が、便宜上、2つに分けて説明。
(1) 企業結合行為を行ったら、懸念される行動が起こりやすくなる
懸念される行動
水平型企業結合
当事会社らにおける価格等の連動
垂直型企業結合
川上と川下
https://gyazo.com/429564eabfee9a5b5555210e54b4e74d
排除シナリオ
閉鎖と情報入手
協調的行動シナリオ
情報入手
混合型企業結合
甲市場と乙市場
https://gyazo.com/28c5fb8b2febd6a1f44592552965b748
排除シナリオ
組合せ供給と情報入手
協調的行動シナリオ
情報入手
懸念される行動が起こりやすくなるかどうかは次の2つのポイントを見て判断
能力
意欲(インセンティブ)
(2) 懸念される行動が本当に起こったら、競争の実質的制限が起こる
正当化理由なく競争変数が左右される状態
正当化理由は、企業結合規制では登場頻度は低い
経営状況(failing firm)
効率性
競争変数=価格、品質、数量等
「競争変数が左右される」=「牽制力が働かない」
牽制力の各種
https://gyazo.com/237cb810ae2edee94cac46d7f2a52b9c
内発的牽制力
少数株式取得の場合など
他の供給者による牽制力
既存の競争者
新規参入者(国内・国外)
隣接市場
市場画定で類型的に外に出したものによる敗者復活
需要者による牽制力
上記に盛り込まれるいくつかのポイント
協調的行動が起きやすい市場か
他の供給者の行動を予測することが容易
抜け駆けの発見が容易
抜け駆けへの制裁が容易
当事会社同士の競争が特に活発(close competitors)であったか
因果関係
条文では「により」「によつて」
もともと弊害が存在した場合
将来いずれにしても弊害が起こる場合
USEN-NEXT/キャンシステム
競争を期待すべきでない場合
ふくおかFG/十八銀行
届出義務
「企業結合集団」の「国内売上高合計額」(10条2項で定義)
10条2項は次のものが混在
届出義務総論
株式取得の届出義務(各論)
「企業結合集団」と「当事会社グループ」の違い
「企業結合集団」
親子会社関係でつながる集団
10条2項
届出義務の範囲を画定するための概念
「当事会社グループ」
「結合関係」でつながる集団
企業結合ガイドライン第1冒頭、第2冒頭
違反要件の成否を検討するための概念
「結合関係」が、あるが弱めである、という場合、
かつては一律に一体化扱いされたので激しく争われたとされるが、
現在は、内発的牽制力の考慮がされるようになったのでさほど争われなくなったように見える
企業結合審査手続
このページ冒頭の時系列図のとおり
もともと事前相談ばかり
平成23年の見直し
第1次審査(30日)
第2次審査(91日)
意見聴取通知期限
当事会社側がその気になれば時計の針で公取委にプレッシャーをかけることができる
最近、
全てを届出前相談の段階で行い、「握って」からセレモニーとして届出を行う案件の増加
第2次審査に入る事例はほとんどなくなった
平成23年の見直しより前に戻ったことになるが、手続に対する信頼感・安心感があるためか、問題とする動きはみられない(?)
参考
「届出一覧」
https://www.jftc.go.jp/dk/kiketsu/toukeishiryo/ichiran.html
先端問題
ビッグテックによるスタートアップの買収
違反要件論
どう捕捉するか
ファンド等による、競争関係にある複数社それぞれの株式の取得
14条(届出義務なし)
少数ずつ(結合関係がない程度の)であれば、どう捕捉するか
本日の後半
クボタ/日本鋳鉄管