令和6年度相談事例9〔輸送用機械部品共同ミルクラン〕
#令和6年度相談事例
あらかじめの整理
相談したX工業会の会員である輸送用機械Aのメーカーを、便宜上、「本件行為者ら」と呼ぶ。
本件行為者らが川下市場で売る商品役務は「輸送用機械A」であるが、この「輸送」は、本件で出てくる「配送」とは、関係がない。本件行為者らは、自分では、「輸送」「配送」は、しない。
この事例は、「部品の共同購入」ではなく、「それぞれ単独で購入した部品の、共同配送」である。なお、この「共同配送」は、本件行為者らが、取引相手方(部品メーカー)から、購入した部品を引き取ってくる、という配送である。
36頁の次の表現は、係り受けに問題があるのであって、結論としては、上記のとおりの理解でよいと思われる。
https://gyazo.com/934bb5f96275f796c5eebbad43a22074
ここより前に、部品の共同購入に関する記述は見当たらない。
37頁(ウ)で、「部品の輸送面のみの共同の取組」と明記している。
本件行為者らは、「物流事業者や自社の物流子会社」に配送を委託する。したがって、本件の取組は、「物流役務の共同購入」である。11k132
「ミルクラン」とは、牛乳メーカーが各牧場を巡回して生乳を集荷するところをイメージして、複数の取引先を回って集荷する運送(本件でいう「引取物流」)のことをそう呼んでいるものであり、それ自体は、購入者が単独でも行うことができるものである。
「ミルクラン輸送」(日本通運)
https://www.nittsu.co.jp/truck/services/milkrun/
それを共同で行うので、本件では「共同ミルクラン」と呼んでいる。
事案
輸送用機械Aのメーカーほとんど全て(シェア90%超)が、上記のような前提で、共同ミルクランを実施。
本件のミルクランには、特殊な装置などは不要。
物流役務を買う市場において、本件の引取物流のシェアは高くない。
部品の物流の費用は、輸送用機械Aの費用の3%程度
物流2024年問題。
共同ミルクラン
「本件取組①」と「本件取組②」とされているが(34頁)、要するに、部品メーカーへの「指示情報」を幹事会社の物流部門に集約し、それを参加企業の物流部門と共有して、引取物流の手配を行う。集まる情報には、部品の調達に関する競争変数の情報が含まれる可能性があるが、幹事会社を含む各社の各物流部門は、情報を各他部署に共有しない。
[推測]この事例の文脈上、「物流部門」とは、物流を手配する部門のことであり、自ら物流をする部門という意味ではないと考えられる。
規範(3(1))
次のものを掲げている
事業者の行為に着目した場合の2条6項
事業者団体の行為に着目した場合の8条(号は必ずしも特定せず)
その上で、他の事業者団体の事例と共通する考慮要素……次のようなこととなるなら問題がある
現在または将来の重要な競争変数の目安を与える(予測を可能とする)
共通の意思の形成、競争制限行為、
適用(3(2))
仕組みの設計段階(「本件取組①」)
36頁ア 物流部門以外に情報を流さないので問題はない、というに尽きる
実施段階(「本件取組②」)
36頁イ 問題はない
(ア)川上市場:物流役務を買う競争
本件のミルクランには、特殊な装置などは不要。
物流役務を買う市場において、本件の引取物流のシェアは高くない。
(イ)川下市場:輸送用機械Aを売る競争
第1段落 共通化割合は小さい
第2段落 情報遮断
(ウ)別の川上市場:部品を買う競争
部品を買うことについては共同行為は行わない(「部品の輸送面のみの共同の取組」)
情報遮断
コメント
複雑なので勉強になるが、冒頭の「あらかじめの整理」のように事例の構造を把握すれば、難しい問題は特にない。
セミナーでのご指摘
2024年問題を正面に出して是認した事例として、令和4年度相談事例1
温度管理が必要な特別な運送車両が出てきた事例として、令和6年度相談事例2