社会支出
社会支出(Social expenditure)は、OECDが基準を定めている社会保障費用統計であり、わが国は、国立社会保障・人口問題研究所が推計、2019年度127.9兆円となっている。その政策分野に家族支出(9.7兆円)がある。家族支出の対象は子育て関連であり、こども庁創設を目指す自民党内の勉強会から対GDP比倍増が提言されるなど、政策形成の場を含め広く利用されている。もっとも、社会支出は、近年推計内容に顕著な改善を見せつつ、情報量および精度においてなお改善途上にある。例えば、家族支出には保育所、幼稚園、認定こども園にかかる支出が含まれているが、その内訳は存在せず、仮に規模を倍増させたとしても、子どもにとって最適な支出配分となっているのか否か確認が難しい。保育所建設費など資本形成のうち地方単独事業分は計上されておらず、その分過小推計となっている。子どもにとってあるべき政策を議論していくうえで、家族支出推計の改善は最優先課題の一つである。本稿は、家族支出のうち就学前教育・保育(4.5兆円)、とくに保育所に焦点を絞り、統計としての課題を改めて明らかにしたうえで、一段の改善に向けた具体策を考察した。 「公的、私的機関により提供される給付、あるいは財政拠出として、世帯や個人を対象に厚生が低下した状態を改善する支援を行うことを目的になされ、ただし、その給付や財政拠出が特定の財やサービスへの直接支払いや個人間の契約移転によるものは含まない」