国税と社会保険料の徴収一元化の理想と現実
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/47/matsuda_01/ronsou.pdf
著 : 松田直樹
掲載誌 : 税務大学校論叢 47 号
発行年 : 2005 年 (平成 17 年)
内容メモ
目的
最近、少子高齢化の進展を背景に、多くの主要国で社会保障制度の改革が非常に重要な課題
特に公的年金制度の改革は、喫緊の課題
少なからぬ国々では、既に抜本的な制度改革が進められている
そのような状況の下、国民年金保険料の納付率の向上や徴収の効率化について、税務当局が国税と公的年金保険料等を一元的に徴収するという態勢を構築するということが望ましいという主張がなされるように
北米諸国や一部の欧州諸国等で実行されている
徴収一元化が実現すれば、税務行政に多大な影響を及ぼすこととなる
本稿では、以下のようなことなどを考察
諸外国では、どのような経緯を経て一元化が行われ、その理想と現実にはどれほどの乖離が認められるのか
徴収一元化を成功させるための条件とは如何なるものであるのか
1 節 国民年金制度の実態
日本の公的年金制度
国民年金第 3 号被保険者制度
2 章 国民年金保険の性質と徴収一元化論との関係
最近の社会保険制度の改革の方向性としては、各種社会保険を統合し、徴収事務を一元化するということが有力な選択肢の一つとして主張されている
社会保険と税の異同
同じ社会保険であっても、その負担と給付のリンクの強弱の程度において、各社会保険は異なっている
各種社会保険の中には、保険原理に比較的忠実である社会保険もあるが、必らずしもそうではない社会保険も存在
社会保険の性質は、負担と給付のリンクの強弱の程度という点において、税の性質とも異なったもの
税と比べれば、どの社会保険も、本来、負担と給付のリンクの程度が強い
もっとも、政府を保険会社みたいなものであると考えれば、税とは保険であるという見方 (税保険説) もある
例えば、公的年金保険についても、それが完全な積立方式に立脚するものでないなら、保険料と税の差異は決定的なものではなくなる
実のところ、国民健康保険については、市町村によっては、保険税としての徴収が行われるようになった
租税法律主義は、国民健康保険税にも適用されるもの
同税が国民健康保険料と同質のものであるとすると、税と保険料との性質上の差異は本質的なものではない
国民健康保険税と国民健康保険料との差異は、制度上の取扱いの違いという形で表れる
その違いは、本来、実質的なものではなく、基本的には名称上の違いに起因するものでしかないという見方も可能
社会保険の徴収制度を改革する動きが活発化している背景
各種の社会保険における国庫負担率が既に相当程度に達しており、各制度における財政自立とガバナンスが弱体化するなどによって、その保険としての性質が大きく変容してきているという事実がある
これらの保険における負担と給付のリンクの強弱が実質的に変化している
保険方式の下で国民皆年金を実現させるという理念には、一定の限界が内在している
公的年金給付財源の国庫負担なしに保険方式と国民皆年金を両立させようとすることは非現実的
実際、ユニバーサル・ペンションを標榜している海外の国では、「税方式」 (年金給付財源を保険料ではなく税で徴収する方式) が採用されているのが通常
3 章 徴収方法の今日的な趨勢と米国の徴収一元化
社会保険料の徴収業務の類型
①社会保険給付業務を担当する官庁が所掌している国
②財務省・国税庁が国税の徴収と一元化している国
③国税業務との一元化を部分的に行っている国
アメリカの社会保険制度
4 章 徴収一元化を成功させた国々の実状
6 章 徴収一元化の是非を判断するための基準