シャウプ勧告に基づく税制改革
シャウプ勧告の理念は、恒久的・安定的な税制を確立し、直接税を中心に据えつつ、申告納税制度を柱とした近代的な税制を構築すること
直接税は、応能負担の原則に基づく 「公平」 に合致し、再分配機能を有するという特徴があり、さらに、間接税に比べて国民が税負担を直接感じることから、税の使途などに関心を持つことで、健全な民主主義の礎になると考えられていた
所得税については、シャウプ勧告において譲渡所得の 2 分の 1 課税や利子所得の源泉分離課税等による合法的な所得税逃れ、高い税率による納税意識の低下等が課題として指摘されていた
そこで、(シャウプ勧告を受けた昭和 25 年度税制改正において) 譲渡所得 (キャピタルゲイン) への全額課税や利子所得の源泉選択課税廃止により課税ベースを包括的にしつつ、税率が引き下げられた (最高税率は 85 % から 55 % へ)
所得税の最高税率の引下げに伴う一部の層への富の集中を防止するため、富裕層の純資産 (500 万円超の純資産) に毎年低率 (0.5 ~ 3 % の超過累進税率) の課税を行う富裕税が導入された
法人税については、法人と個人企業形態との税負担に不均衡が生じる場合には、法人が生産の効率性よりも税負担の軽減を重視して組織形態を選択する結果、経済活動を阻害する傾向があるとされた
こういった点も踏まえ、課税所得に対して 35 % の単一税率が課された
相続税については、不当な富の集中蓄積を防止する観点の下、課税方式が遺産課税方式から遺産取得課税方式に変更されるとともに、相続税・贈与税を一本化し、生前贈与・相続により無償で取得した財産について、取得者ベースで累積して課税する制度が導入
あわせて、最高税率が引き上げられるとともに、配偶者控除や未成年者控除などの仕組みも講じられた
地方税については、地方自治の確立のため、地方自治体の財政力の強化と均等化を図る必要性があるとされ、住民税の充実、固定資産税の創設が行われた
事業税については、課税標準を事業の所得から付加価値に改めるべきとの画期的な提案もなされ、後に外形標準課税が導入された
申告納税制度の下で帳簿書類に取引を記帳する慣行を定着させるため、青色申告制度もこの時に設けられた
参考文献
令和 5 年 6 月 わが国税制の現状と課題 ―令和時代の構造変化と税制のあり方―