二極分散型積上げ横棒グラフ(Diverging Stacked Bar Chart)の作成方法1(Excel編)
執筆者:井芹俊太郎(法政大学)田尻慎太郎(北陸大学)
公開日:2020/09/21
更新日:2020/09/24
カテゴリ:教学IR(学修成果・学生調査・学生支援・EMなど)
データ収集・準備・分析・可視化、各種ソフト利用におけるテクニック
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※標題の二極分散型積上げ横棒グラフ(Diverging Stacked Bar Chart)の完成イメージ
1.二極分散型積上げ横棒グラフのオススメ(井芹・田尻)
大学の調査・分析担当者には、日々アンケートの集計や可視化に取り組んでいる方が多いと思います。しかし、たくさんの設問のグラフが続く中でもパッと見て傾向を見出したい、説明時間は短時間だが何とか相手に傾向を掴んでもらいたい、という場面は多いのではないでしょうか。
例えば、以下のようなリッカート尺度の選択肢が揃った複数の項目を問う場合、回答結果を図2の左側のようにExcelの100%積み上げ横棒グラフで作成することが多いでしょう (※1)。しかし、どの項目が相対的に優れているのか、劣っているのかを目で見て比較することは意外に困難です。尺度に6点、5点、・・・、1点と配点して平均点を算出すれば項目間の優劣は簡単に分かりますが、今度は各選択肢にどれだけ回答があったかという情報が失われてしまいます。
https://gyazo.com/17590408854149c9679ab35c89ffbd98
図1 Microsoft Formsの「リッカート」設問の例
そのような時にオススメなのが、海外のBIで活用されているDiverging Stacked Bar Chartです。訳すならば二極分散型積上げ横棒グラフとなります(※2)。このグラフは、リッカート尺度によって尋ねたアンケートの回答を、肯定的か否定的、あるいは中立を挟んだ肯定的、否定的の2極に分け、その回答の割合を別々の方向に表示するグラフです。Excelの100%積み上げ横棒グラフに、肯定と否定の中間縦軸を設定し、その軸で上下が揃うように各項目の位置を左右にずらして表示したものです。これによりどの項目で肯定的(もしくは否定的な)な質問が多いかが一目で分かります。また平均点順に項目を上下に並び替えることで、項目間の優劣も簡単に把握できるようになるというメリットがあります。
https://gyazo.com/77eb22a858335f66c950afe884ec99ac
図2 100%積み上げ横棒グラフから二極分散型グラフへの変換
本稿では、まずこの二極分散型積み上げグラフをExcelで作成する方法を紹介します。次のコラムでは、それをTableauで作成する方法を紹介しますので、ご自身の環境にあわせてお試し下さい。作成に利用したデータはどちらもダミーデータです。
2.Excelでの作成方法①(井芹)
これは、2019年11月14日に筆者(井芹)がIR担当者連絡会@宮崎で報告した方法です。
ローデータを基に作成するのではなく、先に統計ソフトやExcelのピボット機能で出力したクロス集計表があることを前提に、その集計表を参照してグラフを作成する方法です。ローデータを参照して直接作成したほうが効率的なのは百も承知ですが、BIツールを活用する前の筆者は、大量の集計表を統計ソフトで出力→Excelで可視化という工程を踏んでいたため、その流れを組んだ作成方法です。
画像の薄青色の部分にクロス集計表の値を貼ると、それを黄色の網掛け部分で自動参照し、画像の右側のグラフに表示します。ただし、注意点が3つあります。
・年度や項目名を変えるときは、適宜青色の部分を書き換える必要があります。
・グラフを増やしたいときは、シートを増やす、シートの下部に表やグラフをコピペす必要があります。また、たくさんグラフを作る際には、テンプレート保存やマクロの活用といった工夫も求められます。
・表示凡例の順番が、期待と異なる場合があります。この場合、期待通りの凡例の順番を表示した画像を別で作成し、それと作成グラフをグループ化あるいは重ねるなどする対応が必要です。
…と課題の多い作り方ですが、こちらのテンプレートファイルは、下記Dropboxのリンク先にテンプレートファイルを、YouTubeのリンク先に作成過程説明動画を掲載しているので、関心のある方はそちらをご参照ください。
なお、テンプレートは、中間選択肢を否定側に寄せるもの、中間選択肢を0%前後で左右均等に割り当てるもの、2つ用意しています。
https://gyazo.com/e423eb0db459ae2c601e4421f2c8d0cf
図3 二極分散型グラフ作成用テンプレートファイル①
・テンプレートファイル①
https://www.dropbox.com/sh/ije10x03w5uf3kj/AABGCDZxgcjUF4ImjPGMKSXfa?dl=0
・作成過程を紹介した動画
https://youtu.be/Tf7oG8HyDJM
3.Excelでの作成方法②(田尻)
こちらの方法は筆者(田尻)が2019年3月15日に開催された教学比較IRコモンズの報告会で紹介したものです。基本的には①の方法と同じですが、アンケート回答のローデータから作成することを目的としています。またコラム「4件法か?5件法か?6件法か?7件法か?それが問題だ」で論じたように、中間選択肢がない6件法の設問の場合と、中間選択肢がある7件法の作成例となっています。
テンプレートファイル②をダウンロードしていただき、シート上に記載された手順どおりに操作していけば、どなたでも作成できるようになっています。
https://gyazo.com/e38d2b7ca8b10d750ce0e136c2e1c3ae
図4 方法②で作成した7件法の二極分散型グラフ
ただし、この方法の制限事項として選択肢の順番が変化してしまうので、Excelの「データソースの選択」で凡例項目の順番を手動で修正する必要があります。またその結果、当該選択肢の凡例の位置が逆になってしまうので、あきらめてそのまま表示するか、凡例部分を画像化して切り貼りして作成するなどしなければならないことにご注意ください。
・テンプレートファイル②
https://www.dropbox.com/s/s5gzb1sptmd2yl8/%E4%BA%8C%E6%A5%B5%E5%88%86%E6%95%A3%E5%9E%8B%E6%A8%AA%E6%A3%92%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%95%E3%81%AE%E4%BD%9C%E6%88%90%E3%83%86%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%88_%E7%94%B0%E5%B0%BB.xlsx?dl=1
今回は以上です。
次回(9/24掲載)のコラムでは、Tableauによる2通りの作成方法を紹介します。
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※1)Google フォームでは「選択式(グリッド)」タイプを選ぶことで同様の設問を作成できます。しかしMicrosoft Formsでは応答結果にこれから説明する二極分散型積み上げ横棒グラフで表示されるのに対し、Google フォームの回答結果では行の項目ごとに集合縦棒グラフで表示されるので項目の比較はかなり困難です。
※2)国内では定訳がないようでしたので、筆者間で相談して決めました。
※当コラムの文責及び著作権は、すべて投稿者に帰属します。