『海やまのあひだ』
折口信夫
の
短歌集
海やまのあひだ : 自選歌集 - 国立国会図書館デジタルコレクション
明治三七年から大正十四年にかけての歌
昭和四四年に
近代文学館
より復刻版が出ている
自選歌集 海やまのあひだ (復刻版)(釋迢空) / 古本、中古本、古書籍の通販は「日本の古本屋」
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大正
十三年(五十二首)
島山
葛の花 踏みしだかれて、色あたらし。この山道を行きし人あり
この島に、われを見知れる人はあらず。やすしと思ふあゆみの さびしさ
ひとりある心ゆるびに、島山のさやけきに向きて、息つきにけり
もの言はぬ日かさなれり。稀に言ふことばつたなく 足らふ心
氣多川
にぎはしく 人住みにけり。はるかなる木むらの中ゆ 人わらふ聲
ひるがほのいまださびしきいろひかも。朝の間と思ふ日は 照りみてり
夜
山中は 月のおも昏くなりにけり。四方のいきもの 絶えにけらしも
山住み
夕かげのあかりにうかぶ土の色。ほのかに 靄は這ひにけるかも
大正十二年(三十首)
木地屋の家
鳥の聲 遥かなるかも。山腹の午後の日ざしは、旅を倦ましむ
山々をわたりて、人は老いにけり。山のさびしさを われに聞かせつ
2022-04-01
23:00