海行こ
『今日、仕事終わってから会えん?』
僕も静も普段からメッセージのやり取りは必要最小限や。
やっぱり顔を見て話すんが、一番やからな。
僕が待ち合わせ場所まで行くと、静はもう待っとった。
いつも、僕がどれだけ早うに着いても、静は嬉しそうに僕を待っとる。
「遥、どしたん?」
いつものように助手席に乗り込むと、静は僕の顔を見て少し不思議そうに言うた。
僕が突然静を誘うことなんて、今までいっちょもなかったけんな。
「海?泳ぐん?」
静の言葉に、僕は声を出して笑うた。
「後ろの席見てみ」
静は後部座席を見て、わあ、と声を上げた。
「どれがええんかようわからんかったけん、適当にすごそうなん買うた」
僕は年甲斐もなくうきうきしながら、ホームセンターで花火セットを選んだ。
静はどんなんが好きやろ、どんなんを喜んでくれるやろ。
静の喜ぶ顔を想像するだけで、僕は嬉しかった。
「僕、花火したかったんや!」
静は無邪気にはしゃいだ。
「ほうか、ほなちょうどよかったなぁ」
僕は静がほう言うて喜んでくれるだけで、もう満足やった。