東雲さん、ぬいぐるみになってもカッコええなぁ
日曜日の午後。
和は自分の部屋で裁縫道具を広げ、フェルトを縫い合わせていた。 普段の男っぽい言動とは裏腹に、和の部屋はピンク色のかわいいものであふれていた。
カーテンや布団カバーはもちろん、パソコンのキーボードすらピンク色だった。
「よっしゃ!」
糸を切って、和は嬉しそうに声を上げた。
完成したのは、フェルトでできたぬいぐるみだった。
「東雲さん、ぬいぐるみになってもカッコええなぁ」
うっとりした顔で和は手の中のぬいぐるみを見つめた。
センター分けの黒髪に、藍色と空色の制服を着た円を模したぬいぐるみだった。 和は器用らしく、完成度はかなり高かった。
「東雲さん、円、あ~、円って呼ぼっかな!円、おうち入ろな~」
和はテンション高くそう言うと、円のぬいぐるみを透明のビニールバッグに入れて、枕元に置いた。 「ほうや!ちっちゃい円も作って、車に積んどこ!」
指を鳴らすと、和は紙に小さな円の絵を描き始めた。
円のことを考える時間が、和にとって一番幸せな時間だった。