宝物は大切なもんに付けるでな?
「ウィーッス」
「おつかれさん」
昼に一旦事務所に戻ると、和に会うた。
「神田橋さん、さっそく付けとんや」
和が手にしとる小さなトートバッグを指さして、エビちゃんが言うた。
和はいつもバッグに貴重品や水筒を入れて持ち歩いとる。非常食とか言うてお菓子も入れとうけど、たいてい昼には空っぽや。 「ほらせっかくやけん使わな」
「いつも使うバッグに付けといたら、いつでも見れるしなぁ?」
エビちゃんがからかうように笑うと、和は顔を赤くした。わかりやすい乙女やなぁ。
「エビこそ伊勢原さんからもうたストラップ、どこに付けたんよ」
和が言い返すと、エビちゃんは引き出しのカバンから家の鍵を取り出して見せた。
鍵には僕が作った不出来なストラップが付いとった。
なぜか自慢げにエビちゃんが言うと、和は呆れた顔をした。
エビちゃんなぁ、大切にしてくれるんは嬉しいけど、ほの言い方は僕もちょっとだけ恥ずかしわ。聞く人によっては勘違いされてまうよ?
「おまえはホンマに伊勢原さんが好っきゃな」
和に言われて、今度はエビちゃんが顔を赤くした。何をほんなに照れとんよ、まるでホンマに僕のことが好きみたいやん。
「ほんで伊勢原さんはどこに付けたんスか?」
「僕も家の鍵に付けたよ」
せっかくもうたんやけん使いたいし、鍵やったらまずなくさんしな。
「相思相愛~!」
和のやつ、絶対言うと思たわ。ほんなん言うたらほら、またエビちゃんが恥ずかしがってまうやないか。
「東雲さんは?」
僕はやかましい和をスルーして、東雲さんに話を振った。
「僕はお守り代わりに車のワイパーレバーにひっかけてあります」
「事故りますよ」
間髪入れずに僕が言うと、エビちゃんがキャハハと声を上げて笑うた。 「おいコラ!東雲さんは俺が全力で守らせてもらうわ!」
和が怖い顔をしてエビちゃんをにらみつけたけど、エビちゃんは笑いが止まらんようやった。
「頼もしい女神さまやなぁ」
東雲さんがニコニコしながら言うと、和は恥ずかしそうにして黙ってしもうた。
ほなまぁ、これからもみんなで遊びに行くときは東雲さんに車を出してもらわななぁ?和が守ってくれるんやけん。