僕は神様になるよ
シャツを脱ぎながら静が言うた。
「静は泳げんのだろ?」
「泳げんけど遊びたいもん」
ほうやって口をとがらせる静もかわいかった。
僕は静のそばに寄って、左手を取った。手首には、消えんたくさんの傷跡があった。 「見られても平気なんか?」
静は真夏でも長袖を着とった。傷跡を隠したがっとんは僕でもわかった。
心無いことを言う人はどこにでもおるけん、僕やって隠すと思うわ。
「日よけのシャツ着るけん、ほれにどうせ泳げんけん海にはあんまり浸からんし」
静は少し残念そうに言うた。
「シャツ着るんならまあええか、僕は静の水着姿を誰にも見せたあないだけやけん」 静は靴下を脱いで、ベッドの上に脱いだ他の服の上に置いた。 「ほんなきれいな体見たら、誰でもこうしたあなるよ」
僕は一糸まとわぬ姿になった静を抱き寄せた。
「誰も見んよ、僕なんか」
少し呆れたような口調で静が言うた。
静はうっとりした顔で言うた。冗談を言うとう顔と違うかった。
静にとって僕が神様やっちゅうんなら、否定する理由はなかった。
僕は神様になるよ。静だけの神様に。