僕は今の伊勢原さんが好きです
「和は全然変わらんな、今でも初めて会うた頃みたいにかいらしわ」
遥がそう言うと、和は少し頬を赤くした。
「ホンマ口の達者なおっさんやな」
「なんしよんですか?」
ちょうど外から帰ってきた静が、自分の机の周りではしゃいでいる遥と和を見て言った。
「これな、19のときの和。めっちゃかわいいよ」
遥が静に見せたのは、和が高校を出てすぐ取ったフォークリフトの修了証だった。 「ホンマやね、でも今も全然変わらんよ」
「ほらの~!」
静が言うと、なぜか遥が自慢げに胸を張った。
「ほうや、エビなぁ、伊勢原さんの写真も見せてもらいだ。めっちゃかわいいで」
ニヤニヤしながら和が言うと、遥は少し恥ずかしそうにリフトの修了証を静に見せた。 今と変わらないくっきりした二重で、精悍な顔立ち。
まだあどけなさの残る、少し生意気な顔をした遥が、こちらを見ていた。
「……めっちゃかわいいです」
静は顔を火照らせて、小さな写真を見つめていた。
「な?髪もふさふさやし?」
「和は一言多いんよ」
遥は和の頭をつかんで、桃色の髪をぐしゃぐしゃにした。
「ほの頃はけっこうモテたんよ、特に年上のお姉さまからな」
ドヤ顔でそう言う遥を見て、静はクスクスと笑った。
「でも、今の方がかっこええです。僕は今の伊勢原さんが好きです」
静はそう言って、自分の発言に驚いたような顔をして慌てて遥から目を逸らした。
遥は嬉しそうに笑いながら、静の頭をポンポンと叩いた。
静は頬を赤くして、恥ずかしそうにうつむいていた。