ほの頃はけっこうモテたんよ
僕と和は、高校を出てすぐ取ったフォークリフトの修了証の写真を見比べとった。 「和は全然変わらんな、今でも初めて会うた頃みたいにかいらしわ」
僕がほう言うと、和は少し頬を赤くした。
「ホンマ口の達者なおっさんやな」
和は見た目も全然変わらんし、中身もずっとええ子やけんなぁ。
もうちょっと大人っぽくなれよという話も聞くけど、僕はほうは思わんな。子供みたいに素直で正直なんは和のええところやし、内面は僕なんかよりずっと大人や。
ほんなん本人に直接言うたら恥ずかしがってしまうけん、言わんけどな。
「なんしよんですか?」
ちょうど外から帰ってきたエビちゃんが、自分の机の周りではしゃいどう僕らを見て言うた。
「これな、19のときの和。めっちゃかわいいよ」
僕はエビちゃんに和の修了証を見せた。
「ホンマやね、でも今も全然変わらんよ」
エビちゃんは写真と和を見比べてほう言うた。
「ほらの~!」
なぜか僕は自慢げに胸を張ってしもうた。ほら、和は僕の娘やけんなぁ。
和は恥ずかしそうにもじもじしとったけど、僕の手元を見てふと思いついたようにニヤついた。
「ほうや、エビなぁ、伊勢原さんの写真も見せてもらいだ。めっちゃかわいいで」
エビちゃんに向かってほう言うて、和は僕の手元を指さした。
やっぱりほうきたか、しゃあないなぁ。
ちょっと恥ずかしいけど、僕はエビちゃんにリフトの修了証を見せた。 18歳の僕は、ちょっと生意気な顔で写真に写っとった。
今と変わらんくっきりした二重がチャームポイントなんやけど、どう?
「……めっちゃかわいいです」
エビちゃんはじっと僕の写真を見つめとった。心なしか、顔が火照っとうように見えた。
ほんなに見られたら穴が開いてまうよ、恥ずかしなぁ。
「な?髪もふさふさやし?」
「和は一言多いんよ」
僕は和の頭をつかんで、桃色の髪をぐしゃぐしゃにした。
和はわめきながら手ぐしで髪を直しとった。
「ほの頃はけっこうモテたんよ、特に年上のお姉さまからな」
僕がドヤ顔で言うと、エビちゃんはくすくすと笑うた。
「ほうでしょうね。でも、今の方がかっこええです。僕は今の伊勢原さんが好きです」
エビちゃんはほう言うて、恥ずかしそうに僕から目を逸らした。
僕が頭をポンポンと叩くと、エビちゃんは顔を赤くしてうつむいてしもうた。
ほんなに恥ずかしがらんでもええって、かいらしなぁ。
僕も和とエビちゃんが好き。
お父さん、かわいい娘と息子がおって幸せやわ。