僕はお父さん失格や
「遥の髪はくせっ毛なぁ」
ドライヤーで乾かしたばかりの僕の髪を触りながら、静が言うた。
「あんまり触られん、もうだいぶ寂しいんやけん」
「ほんなことないよ。ほれに遥やっていっつも僕の髪触るやん」
ほう言うて静は口をとがらせた。
「ほなって、静の髪はふわふわで気持ちええんやけんしゃあないでえ」 「遥の髪やって気持ちええもん」
ああ言うたらこう言う。
「子供ちゃうもん、もう25やもん」
僕が笑うと、静はほう言い返してきた。もうほの言い方が子供なんよ、かわいいんよ。
「静」
僕は静を見つめたまま、すべすべした頬をなでた。
「ん?」
静は上目遣いで少し首を傾げた。
「なんほれ」
静は吹き出した。
まあ、ほうよな。おかしいよな。自分でも何言うとんなと思うわ。
ひとしきり笑うと、静は僕の胸にそっと両手を当てて、上目遣いに僕を見た。
「どんな風に呼んだらええの?」
どんなことでも静は僕をバカにしたりせん。僕のアホみたいなリクエストに応えてくれる。
「僕に甘えるときの静みたいに」
僕がそう答えると、静は一旦僕から目を逸らして、もう一度僕の目を見た。
「お父さん」
狐に似た目を細くして、静が言うた。
僕は静が雑に着とったバスローブを脱がせた。
滑らかな白い肌に指を這わせると、静はくすぐったそうに笑うた。
すごくアカンことをしとう感じがして、興奮した。
「お父さん」
頬を紅潮させて、静が言うた。
静も興奮しとうみたいやった。
僕が父親振ると静は不機嫌になることがあった。今思えば、対等な男として見られたかったからやろな。
ほなけどこういう遊びは好きなんやな、かわいいやっちゃ。
僕は静の髪をなでた。静は嬉しそうに笑うた。
「静はホンマに抱っこが好きなぁ」
僕は静を膝の上に乗せて、ふわふわの髪をなでた。いつもと違うシャンプーの匂いがした。
「お父さんはホンマに、僕が好きなぁ?」
静は僕の耳元でささやいて、くすくすと笑うた。ようわかっとう。
「うん、僕は静が好きや」
僕は静を見つめて言うた。
「お父さん、めっちゃ好き」
「ほなけんね、お父さんのしたいこと、いっぱいしてええよ」
ほう言うて、静はいつもみたいに小さな舌で赤い唇を舐めた。 静の誘惑に、僕はもうこれ以上耐えきれんかった。
「僕はお父さん失格や」
静は目を細めて僕を見とった。
静でいっぱいや、僕の中。子供なんか入る余地がないわ。