僕とデートせん?
「ゴメンな、エビちゃん。エビちゃんにとって僕の電話がほんなに大切なことやとは思わんかったんや」
申し訳なさそうに遥が言った。
「ええよ」
静は遥を見て、微笑んだ。
そう言って静は声を上げて泣いた。
静が遥の前でそんな風に泣くのは、初めてだった。
「嫌や……」
子供のように泣く静の両肩を、遥はそっと掴んだ。
「デートしてください、お願いやけん。どこでもエビちゃんの行きたいとこ行こ?」
「嫌……」
「どこでもええんよ?」
「遠くてもええの……?」
小さな声で訊ねる静に、遥は笑顔でうなずいた。
「ええよ」
遥が言うと、静は少し考えるように視線を泳がせた。
少し上目遣いに遥を見た静の目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。
そう言うと遥は静を抱きしめた。