僕とデートせん?
#見んといて
「ゴメンな、エビちゃん。エビちゃんにとって僕の電話がほんなに大切なことやとは思わんかったんや」
申し訳なさそうに遥が言った。
「ええよ」
静は遥を見て、微笑んだ。
「僕の誕生日なんか祝う価値ないし」
そう言って静は声を上げて泣いた。
静が遥の前でそんな風に泣くのは、初めてだった。
「エビちゃん、僕とデートせん?」
「嫌や……」
子供のように泣く静の両肩を、遥はそっと掴んだ。
「デートしてください、お願いやけん。どこでもエビちゃんの行きたいとこ行こ?」
「嫌……」
「どこでもええんよ?」
「遠くてもええの……?」
小さな声で訊ねる静に、遥は笑顔でうなずいた。
「ええよ」
遥が言うと、静は少し考えるように視線を泳がせた。
「水族館でもええ?」
少し上目遣いに遥を見た静の目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。
「ええよ、水族館行こ」
そう言うと遥は静を抱きしめた。
#僕はエビちゃんを抱きしめた