似合とうよ
「おっ、ええやん」
待ち合わせ場所にやってきた和を見て、円が目を細めた。
和は白地に赤い花がついた浴衣を着て、恥ずかしそうにもぞもぞしていた。 「ええ、エビちゃんはそれ、どしたん」
遥はわかりやすく動揺していた。
「え?エビちゃんなん?嘘やん」
円が和の隣に目をやり、疑るような声で言った。
「僕ですよ」
紺色に花火の柄の、女物の浴衣を着て髪飾りを付けた静が、いたずらっぽく笑ってみせた。
「かわいすぎへん?全然ありやで」
「ありって何が??」
円の発言に和が素っ頓狂な声を上げた。
「神田橋さん、お祭りやからって食べ過ぎたらあかんよ」 「俺の声聞こえてます?」
和の抗議を受けて、円はにっこりと微笑んだ。
「ずるいわ、東雲さんかっこよすぎるもん」
「和、興奮しすぎて心の声が漏れとうよ」
「伊勢原さんもまあまあかっこええスよ」
和は遥に向って、にぃ、と笑った。
円も遥も、浴衣姿だった。
「めっちゃかっこええですよ」
「おー、さすがエビちゃんやな、見る目があるわ」
遥が言うと静は小さく声を出して笑った。
「ほな行こ、神田橋さんが腹が減っておれんらしいけん」
「いや、ほんなん言うてないスよ?」
和が声を上げると、円ははいはいと適当に返事をしながら歩き始めた。
慌てて和がそのあとを追いかける。
「静」
小さな声で、遥が呼んだ。
「似合とうよ」
静を見つめる遥のまなざしは、かすかに熱を帯びていた。