伊勢原さんの好きなとこ、100個書いてきた
「伊勢原さんこれ」
エビちゃんに水色の封筒を渡されて、僕は一瞬たじろいだ。 よく見ると、あのときもらった封筒とは違う絵が描いたある。
「これは?」
僕が訊くと、エビちゃんは嬉しそうに笑うた。
「伊勢原さんの好きなとこ、100個書いてきた!」
「えぇ!?」
僕が素っ頓狂な声を出すと、エビちゃんは口元を押さえてキャハハと笑うた。 「もっとあったけど手が疲れたけん100個しか書けれんかった」
エビちゃんは後ろで手を組んで、もじもじしながら上目遣いに僕を見た。
僕は封を開けて、中に入っとった手紙を見た。
エビちゃんの小さあてきれいな字で、100まで番号が振られた僕の好きなところが書いてあった。
「ホンマに100個書いたある……」
優しいところ、正直なところ、かっこいいところに始まって、ようほんなとこ見とんなぁちゅうとこまで書いたある。
歌がうまい、ほれはよう言われる。くしゃみがかわいい?ほんなん言われるん初めてやわ……。
「伊勢原さん」
エビちゃんに呼ばれて、僕は我に返った。
「大好きや」
エビちゃんは上目遣いにじっと僕の目を見て言うた。恥ずかしそうに笑っとった。
ごめん、やっぱり我に返れんかった。
なんかもう、頭がぼんやりして、夢の中におるみたいや。
エビちゃんは一人満足して、どこかへ行ってしもうた。