二人で行こ?
「ウィッス」
和が休憩室でスマホをいじっていると、円が入ってきた。 「あ、ウィーッス」
顔を上げて和が挨拶すると、円はゆっくりとした動作で和の正面に腰かけて、窮屈そうに長い脚を組んだ。
「どしたんスか?いつも忙しくてこっち来ることもあんまりないのに」
スマホを胸ポケットにしまって、和が訊ねた。
唐突に円が言うと、和の顔がパッと輝いた。
「行く!行きたい!行きます!」
前のめりになる和を見て、円は嬉しそうに笑った。
「あっ、ほな伊勢原さんとエビも……」
「神田橋さん」
円は和の言葉を遮ると、目を細くして人差し指を唇にあてた。
「二人で行こ?」
甘い吐息と共に、低い声で円が言った。
円は感情がよく出る目をしていて、興奮すると瞳孔が大きく開いた。 和は目をキラキラ輝かせて手を組んだ。
和は円の黒い瞳が好きだった。