二人で、神様に会いに行かんか
インターホンが鳴った。
僕がドアを開けると、大きな段ボール箱を抱えた遥が立っとった。
「何それぇ?」
僕が訊ねると、遥は満面の笑みを浮かべて「秘密」と言うた。ほんなでかい秘密ある? 夕食の後で、遥がシャワーを浴びると言うけん、僕はいつもみたいにタオルとパジャマを用意した。
僕は遥が出た後で、ゆっくり湯船につかった。
髪を乾かしてリビングに行くと、遥の姿がなかった。
ダイニングにも、キッチンにもおらん。
「遥?」
ベッドルームのドアを開けると、遥がこっちを向いて立っとった。
僕は言葉を失った。
僕、夢を見とんのとちゃうやろか。
「おいで、円のもあるよ」
遥は少し恥ずかしそうに笑うた。
僕は遥に近づいて、胸に触れた。
「どしたん、僕よ、遥よ。びっくりしたんか?」
遥は僕が胸に当てた手に自分の手を重ねて、おかしそうに笑うた。
ほれから僕は、呆然としながら遥に手伝ってもろうて着替えた。
真っ白な、タキシードに。
僕達は姿見の前に並んで立った。
遥は嬉しそうに笑うとった。僕も笑うた。
遥はめちゃくちゃカッコよかった。映画俳優みたいやった。遥も僕にカッコええよと言うてくれた。 ほれから遥はひざまずいて、僕に指輪を差し出した。小さなダイヤモンドが埋め込まれた、プラチナの指輪やった。 遥の言葉に、僕は何度もうなずいた。嬉しくて涙が止まらへんかった。
指輪は僕にぴったりやった。いつ調べたんよ、指輪のサイズなんて。
「愛しとうよ」
遥はほう言うて笑うた。子供みたいに無邪気な笑顔やった。
遥は僕に馬乗りになると、僕の首に手をかけた。
遥は笑顔で言うた。いつもと同じ、優しい笑顔やった。
遥が言うた。僕も、同じこと思とった。
嬉しかった。遥が、同じこと思ってくれとるんが。
「神様は、僕達を許してくれると思う?」
僕が訊ねると、遥は笑顔でうなずいた。
「ほな、連れてってくれる?」
やっぱり、遥は笑顔でうなずいた。僕の大好きな笑顔やった。