エビちゃんのこと、知るたびにわからんようになっていく
待ち合わせた場所に車を停めると、エビちゃんは泣き出してしもた。
「どしたんな~、また月曜日に会えるやん」
僕はほう言うて、エビちゃんの頭をなでた。
エビちゃんのこと知るたびに、ますますわからんようになっていく。
僕はどうしたらええんやろ、どうするんが正解なんやろ。
「エビちゃん、時間まだいけるん?」
僕が訊ねると、エビちゃんはうん、と小さくうなずいた。
「ほな僕んち行くか?」
今から他に行くとこも思いつかんかったし、僕はほう提案した。
お金もかからんしのんびりできてええやろ。
「行きたい」
エビちゃんは涙でぐずぐずになった顔で僕を見ながら言うた。
「とりあえず、涙拭きな」
僕はティッシュをエビちゃんに差し出した。
ホンマに、子供みたいな子やな。
アパートに着くと、僕はエビちゃんを中に入れて、引っ張り出した座布団の上に座ってもうた。 マグカップにお茶を淹れて持っていくと、エビちゃんはお菓子の缶を手にしとった。
「これ開けてええ?」
「あっ、ほれは……」
僕が何か言おうとする前に、エビちゃんは缶を開けてしもうた。
中に入っとったんは、きれいなメモ用紙やった。ほうよ、エビちゃんがお菓子と一緒にくれた手紙よ。 ――おつかれさまです。お仕事大変だと思いますが、無理せず安全運転でお願いします。
ほんな短い手紙。でも、こういう手書きの手紙って嬉しいな。
ほんで缶に入れて置いといたんよな。
「置いといてくれたん?」
「せっかくエビちゃんが書いてくれたのに、放れんやん」
僕が言うと、エビちゃんは恥ずかしそうに笑うた。
晩飯に、僕はありあわせの食材で得意のチャーハンを作ってエビちゃんに食べてもうた。 エビちゃんはおいしいと言うて食べてくれた。
二人で食べるご飯はおいしかった。
食後少しゆっくりしてから、エビちゃんを送っていった。
エビちゃんはもう泣かんかった。満足げな顔をしとった。
帰宅すると、エビちゃんから「今日はありがとう」とメッセージが入っとった。 僕も「楽しかったよ、ありがとう」とメッセージを返しといた。
今日はいろんな事考えた。エビちゃんのこと、知るたびにわからんようになっていく。
ほなけど一緒におって楽しかったんは間違いない。不思議な魅力のある子やと思う。
これからも僕は、エビちゃんのことを助けていきたい。