これ、僕が着るん?
僕は静に紙袋を渡した。
「えっ、何?開けてええの?」
ほう言いながら、静はもう中を確かめようとしとった。
「僕からのプレゼント、というか、静が僕にプレゼントしてほしいっていうか」 僕の目は泳いどったと思う。結構緊張もしとった。
「えー何それ?なぞなぞ?」
静は楽しそうに言うと、中身を取り出してベッドの上に置いた。 「え?何これ?」
それを広げた静が、一瞬固まった。
あー、やってもたかなぁ。ドン引きかなぁ。変態やと思われたかなぁ。 「これ、僕が着るん?」
静は両手で丈の短い紺色のプリーツスカートを広げて、僕に見せた。
「……ごめん」
これはやってもたなぁ。
「静はきれいやから、絶対似合うと思て」
うつむいたまま僕が言うと、静はキャハハと笑い出した。 「遥、こういうの好きなん?ええよ、僕着るよ」
そう言うが早いか、静はバスローブを放り出すと真っ白なシャツの袖に腕を通した。
「これ、ちょっとおっきいな、わざとおっきいのにしたん?」
「うん」
僕はその様子をソファに腰かけてじっと見とった。
大きめのシャツは、静の体を一層小さく、華奢に見せた。
「下はちょっと短すぎるな?」
紺色のスカートを履いて、笑いながら静が言うた。
短いスカートからは伸びる白い足は、まるで人形みたいにきれいやった。
「……うん」
思うた以上に、静にはシャツとスカートが似合うとった。
「これも履くんな?」
「うん」
静は僕の目の前で紺色のハイソックスを履いた。
そのしぐさがたまらなく新鮮やった。
静はおかしいて仕方がないといった表情で僕を見たけど、僕はもう全然余裕がなかった。
「忘れた……」
僕は立ち上がって、静の姿を頭のてっぺんからつま先まで眺めた。
大きめの真っ白なシャツ、紺色のネクタイ、短いスカート、ハイソックス。
「こういうの好きなん?」
もう一度、静が言うた。
「うん、好き」
僕は答えた。
「ほな、遥へのプレゼントや」
静は僕のバスローブをはぎ取って、抱きついてきた。
いつもと違うシャンプーの匂い。いつもと違う服。いつもと同じ、僕の大好きな静。