あと何回一緒に見れるん?
大勢の人が、帰路につきはじめた。
僕は人混みではぐれんように、静の手を握った。
静の手は震えとった。
静は泣いとった。
誕生日の後、初めてデートの約束をしたあの日のように、嗚咽しとった。 僕は静の手を引いて、人気の少ないところまで歩いた。
歩いとる間も、静はずっと泣いとった。
僕はあの日のように、静の両肩をそっと掴んだ。
「花火、終わってしもた」
そう言うと静は堰を切ったように声を上げて泣いた。
「また来年も来ような、次の年も、その次の年も、ずっと、ずっと、一緒に花火見よ」
「何回?」
「ん?」
僕は静の言葉に首を傾げた。
「あと何回一緒に見れるん?」
ぐしゃぐしゃの顔で、静は僕を見上げた。
「僕にもわからん」
僕は静を抱き寄せた。
僕は静の髪をなでながら言うた。
僕はあと何回、静と花火を見れるんやろ。
あと何回、静を抱きしめられるんやろ。
僕は泣いた。