破れ窓理論
ジェームス・ウィルソン、ジョージ・ケリング「割れた窓ガラス ―警察と近隣の安全― 」(日本ガーディアンエンジェルス訳、小池信夫監修)
James Q. Wilson and George L. Kelling(1982); "Broken Windows: The police and neighborhood safety"
1982年に米国で提唱された犯罪抑止理論。割れた窓ガラスを放置しておくと、ここは管理・監視されておらず自分も割っても問題ないという印象を与え、模倣的、連鎖的にガラス窓が割られていってしまうように、都市において軽犯罪の取り締まりを放置すると、重大な犯罪を助長すると指摘。治安政策へのインプリケーションとして、1994年にニューヨーク市長に就任したジュリアーニ氏は、この理論に従って「ゼロ・トレランス(寛容無用)」政策を発動。無賃乗車やグラフィティの摘発やホームレスの排除を強化することで凶悪犯罪も激減させ、好景気も伴い凶悪犯罪都市というニューヨークのイメージを一新させた。
この理論は21世紀に入って、日本の札幌や大阪などで採用されはじめている。
警察庁編「警察白書」(平成15年度版、第2章第2節)
『警察白書』平成14年度版、第1章第3節)
しかし、この破れ窓理論の現実への適用は問題も多く指摘される。ごく簡単にいえば「疑わしきは罰せず」というのが近代社会の原則であったのが、破れ窓理論のロジックを拡大することで、巨大なリスクに転じそうな確率が少しでもあれば未然に潰すべきであるという、「疑わしきは罰せよ」に変遷しつつある。これは特に9.11以降のアメリカのテロ対策の過剰さに対して指摘される問題でもある。 酒井隆史『自由論――現在性の系譜学』(青土社、2001年)
Miyadai.com - 宮台真司「米国中心型のグローバライゼーションに抗う為の智恵」