ドキュメント作りのアンチパターン
実は考え方を少し変えるだけで解決できるsawachin.icon
よく聞く課題
文字起こしする余裕がない
清書が後回しになる
見つけられるように構造的に整頓する時間がない
ドキュメントが更新されず、風化する
よく聞く解決策
「一時的な負荷だ」と通常業務にアドオンする
残業増やす
格納ルールや命名規則を作り、徹底させる
どれも破綻しやすい
正確に聞き取り、情報補完しながら正しく記載するのを、会話に負けないタイピングスピードで行うのは、超高等技術。
ほとんどの人には不可能です
取り組んでみても…
読んでもよくわからないメモレベルの議事録が量産
価値のある議事録作りの負担が、出来る人に重くのしかかる
議事録は「情報を見つけ出す」には不適な形式なので、ほとんどの人が読まず、作成コストが回収できない
プロセスを必要十分に書き残すのは、超高等技術
後で聞かれる、重要になる情報は十分に残しながら、
読みやすいように不必要な情報はわざと書かない。
取り組んでみても…
読めない、読む気にならないログが量産。結局、相談のための要約や口頭共有をさせることに
忙しい人は書かない。メモ取らずとも間違えずにできることは書かない。わざわざ書いてもらえるのは「これは言う必要あるだろ」と思うものだけ
ほとんどの人にとって、Office製品やメモ帳は考えるときには使わない。下書きは紙や手帳。時間かけて作る価値のあるものだけ電子化する
余裕があるメンバーの方が書くので、作業ログやメモを中心にすると品質の高くない資料だらけになる。読まれない、使われない
「一時的な負荷だ」と通常業務にアドオンする。残業増やす
アドオンを許容出来るのは
「このままじゃやばいぞ。辛いぞ」と危機感があり、
プライベートや他のやりたいことを後回しにしても良いと思っている人
取り組んでみても…
適した人がやってくれない。ナレッジを1番持ってる人は短時間で成果が出せるので、既に他のアドオンが乗っている。
ドキュメントに強く課題を持つのは、ドキュメント化されてないナレッジがたくさん出てきてから。作りたいドキュメントが山ほどあって、優先度が決められず、プロジェクトが大きくなりすぎて途中で頓挫する。
「あった方が良さそう」でドキュメント作りが進むので、想定読者と想定シーンがない。結果、作成者が「どこまで書くべきか」の判断基準を持てず、読まれない資料が量産されるか、いつまでも下書きになってしまう
ごく一部メンバーで一気に作り、その人たちがそのまま管理者に。メンテナンスがそのままその人たちの責任になり、手が回らない。「ドキュメントは使ってもメンテされず要らなくなるな」の認識が組織内で広まりドキュメントを作ることへの否定的な雰囲気になる
格納ルールや命名規則を作り、徹底させる
命名規則と格納ルールは同じ発想です
たくさんあるとパッと見つけられないから、グルーピングしたい
グルーピングは
同じ種類であれば同じ種類であるとわかるように、違うならば違うとわかるように。
したい
設定しなくて済むのであれば、設定しない方が良いです
この2つはどんなシーンでも効果的なものではありません
格納ルールや命名規則があることで
ドキュメント作成時に気にすることが増えます
ルールを知らなければ見つけられません
量が少ないのであれば、ルールを作らないのもおすすめです
だからよくこんなことが起きます
命名規則・格納ルール作るのが早すぎて、うまく分類できないドキュメントが多数発生。見つからない。
ルール通りにする人、しない人の間で喧嘩が発生。「ちゃんとできる人だけ格納しましょう」「管理者をつけましょう」となって、ドキュメントが公には共有されず、DMやチームのチャットといったアンダーグラウンドで出回るように 命名規則・格納ルールを作るのが遅くて、「格納し直しがめんどくさい」「新ルール覚えられない」といった移行コストが発生。結果新ルールと旧ルールが混在することに。
実はこうじゃない
情報が全てドキュメントになっている
ナレッジが体系化されている
ドキュメントがあれば全てわかる
正しい情報のみ書かれている
組織において大事なのは
顧客により高い価値が提供できること
同じ価値であればより小さなコストで実現できること
これらが満たせるのであれば必ずしもナレッジは体系化されてなくて良いし、そもそもドキュメントになってなくて良いsawachin.icon
実はドキュメントは…
事前に全部書かれてなくて良い
大事なのは「価値を生む」こと。
ドキュメントになっていなくても、有識者に相談できるなら問題ない
もちろん、ドキュメントになってる方が有識者に聞く時間が不要になって、コストは下がります
体系的に整理されてなくて良い
大事なのは「知識を理解し、活用できる」こと。
仕事での大抵のケースでは「今の困っている状況を的確に解決してくれること」が大事
体系的な知識は「学ぶぞ!」というとき向け
まとまった知識といえば本。良い本は読み込んで自分の知識にして欲しいけど、そもそも本を読む人はレア
必要な知識と、内容を理解するための補足がストレートに欲しい
正しさにこだわらなくて良い
「間違えた情報が書かれる」のはすごく重要
実はこんな情報共有になっています
間違えた理解をしやすい内容です
一人間違えて理解しているならば、他にもいます。
重点的に説明すべきものだとわかります
私はこういう理解をしています
理解度がわかるから、『何を伝えたら正しい理解になるか』を周囲が判断できる
実はこんな効果を生みます
「正しい情報が書き込まれる」のを促進します
間違いがそのまま放置されるのはまずいと思って、優先度を上げて、修正をしてくれることが多い
「**について教えてください」だと、「ざっくり**ってことです!詳細は後で書いておきます!」と返ってきて、いつまでも書かれません
こういう目的でありましょう
ドキュメントを用いて「コミュニケーションの効率を上げる」こと
どうせ聞かれることは、書いて置いておく
「わざわざ伝える」をゼロに近付ける
一度話したことは、コストゼロで広める
コミュニケーション。対話です。
「ナレッジシェア」「情報共有」という感覚は頭から取り除いてくださいsawachin.icon
コミュニケーションになり得ないドキュメントが増えがちです
「(私はこうしてうまくいったから)こうしろ」という一方的な通達
長々と続く「それ知ってるから…」という前置き
読み手にとって肝心な部分が書かれていない
どれも、読まれないドキュメントにつながります
ドキュメントをコミュニケーションと思ってください
相手の性格や、読者の状況に合わせて
しっかり前置きを置いたり、
結論ファーストにしたり。
読み手が順に理解していけるようにしましょう
「なんで?」と思ったらすぐに解消される流れに。
直接話しているときに、相手の反応が悪いまま話し続ける人はいないはずですsawachin.icon
具体的にはこういう方針です
「書く」よりも「読んでリアクション」を増やす
具体アクション
このドキュメント、このページ、役に立ったよ!を作成者に伝えましょう
わかりにくい、ここもうちょっと説明が欲しいを作成者にリクエストしましょう
リアクションをもらって初めて、「この組織では、この人相手では、こういうことを伝えたらいいんだ」がわかります
「言いたいこと」よりも「聞きたいこと/知りたいこと/困っていること」を中心にドキュメントを増やす
具体的には
「レクチャー/体系的な説明」よりも「日々の細かい疑問」こそドキュメントにする
具体的には
「転記」ではなく「最初から共有スペースに書く」ように
具体的には
総じてこういう狙いです
書く文化よりも聞く文化・読む文化を狙う
「ドキュメント書いたらすぐに評価される/喜ばれる」状態にする
プラスオンされる業務を限りなく小さくする
少しずつ変わっていきます
最初からできなくて当たり前
どう書くと良いか?そもそも何を伝えると良いか?
わからなくて当たり前です
作業ログもレポートもぐっちゃぐちゃのものが共有されます
論文も本も記事も「何度も読んでもらって、原型がないくらい修正される」ことで作られています
いきなり良いものが作れるのは「ドキュメントを何度もレビューし、レビューされたおかげで、作りながら自分で修正ができるから」にすぎません
「読まれてコメントされる」「読んでコメントする」を繰り返して、その組織で必要なレベルまでドキュメントは育ち、ドキュメンテーションスキルが上がります
過剰なスキルは不要です
みんな同じ時間に出社して、顔をあげれば相談できるならば、「一発で状況を伝えるだけの分析力と言語化力」は不要です
大多数が長文を読むのが苦手で、読解力を身につけるのが事業部成果に結びつかないならば、情報伝達を全て動画にしてしまうのも有効な一手です。
ドキュメント・コミュニケーションは成果を出すための手段。徹底してもコストがかさむだけなら、思い切ってやめましょうsawachin.icon
事業成長や組織の持続に必要なドキュメント・コミュニケーションを定義して、スキル不足は相互フィードバックで育てていきましょう
スキルアップの方法は世の中に溢れています
思考の仕方、プロジェクトマネジメント、問題解決も、本が増えてきました
まずはスキルや内容の不足に気付きましょう
「伝わらなかった」「確認された」ならば、足りてない証拠です
読み手にコメントもらって初めて気付きます。
ドキュメント文化に変えたいならばこうしましょう
やる気を生んで、小さな成功体験から積み重ねていきます
まず啓発します
啓蒙(知識を与えて答えを教える)ではない
メンバー一人一人に「よし変わるぞ。頑張るぞ」と奮い立ってもらう必要がある
考え、シミュレーションした上で「確かにこのやり方が1番良いわ。良い未来辿り着くわ」と思うことで、相互フィードバックやスキルアップといったストレッチゾーンなことを頑張るようになる 啓発(答えを考えるための道筋を提示する)のがBest
こういう認識になっているとモチベが続きやすいです
ドキュメント中心にすると、all-winだな
成果も上がるし、負担も下がるし、良いポータブルスキルが身につくし。
良いドキュメントに育てるのは「伝える側」じゃなくて「受け取る側」なんだ
コメント入れよう。読みやすかった/わかりやすかった/役に立ったとフィードバックしよう
最初からできなくて当たり前なんだ。少しずつ変わっていけば良いんだ
よし、少しずつやっていこう
業務に取り込みます
こんな順序だと、効果が出やすいですsawachin.icon
すでにあるテキストコミュニケーションをドキュメント・コミュニケーションに一つずつ変えましょう
チャットでの質疑応答をドキュメント上に移行しましょう
FYIは直接チャットに載せず、ドキュメントに記載してチャットでドキュメントのURLをシェアしましょう
メールや全体発信もぜひドキュメントに書くように
口頭共有をしっかり文字起こししてみましょう
会議を「議事録を書くスピードに合わせる」ようにしてみましょう
多人数の会議でも1on1でも書いて応えるようにしてみましょう 会議やラリーを減らしてみましょう
テキストが書き残ってきて「みんなに説明すべきこと」「どうせ聞かれること」「シェアしたらみんなが喜んでくれること」が可視化されてきました
きっとメンバーそれぞれ「何を」「どう」書いたらいいのかの感覚ができてきています
この時点で「ドキュメントを読めば、チームの雰囲気や価値観が感じ取れる」ようになっています
強力なオンボーディングツールの出来上がり
こうしましょう
会議前にあらかじめ書いてみましょう
そもそも作業や思考のときに書き残してみましょう
それらを会議、相談前にそっとシェアしてみましょう
きっと「会議せずとも解決したね」「一回喋りましょう」「ああ、まだ人に相談する状況じゃなかったわ。もうちょっと考えてこよう」となります