異能
異能性脳腫瘍とは、都市の気狂いが抱えた不治の病である。
病であり異脳と共に異能を齎した。
正式名:異能性脳腫瘍
脳腫瘍と名称の一部にあるが、腫瘍が二次的な健康被害であると研究が進んでからは脳疾患ではなく精神疾患として分類された経緯がある。偏執病に近しい程強く固執した感情を人間が得る事で発症の要因とし、偏執を維持させる為の代償を受ける代わりに人為を超えた特殊な力である異能を得ることになる。
代償及び異能の内容は発症要因の偏執に関連する事が多く、また同質の感情からであっても同じ異能(及び代償)とは限らないという性質の為に種類は千差万別であり罹患者によって大きく異なることが知られている。
異能発症による共通の特徴として身体能力及び自然治癒能力の向上が挙げられ、異能によっては物理法則を無視するような症状もあり。
異能の根源とされる腫瘍は罹患者の偏執である感情を餌にする事で成長しこの感情を助長する為、代償の他にも精神抑制による無感情化や逆である高揚を促す事もあり強度に個人差はあるものの罹患者の精神性や人格に影響を及しているケースも多い。
この為異能は思想の変化を大きく嫌い、その傾向が罹患者にある場合は頭痛にはじまり吐き気、めまい、意識障害などの障害反動を引き起こし、その他重度の精神的不安定に陥った場合は異能の制御が不可能になる事も。
この制御不能になった状態を暴走と呼び、罹患者の肉体・精神両面において強い負担となる。また障害反動は異能の酷使によっても起こる事が判明し、このことから異能の根源は脳腫瘍であると判断された。
何度も障害反動を繰り返すうちに偏執や代償の悪化、それに伴う異能の強化がされる事がありこれを症状の進行として扱う。
障害反動の最悪なケースは罹患者の偏執が無くなった場合であり、この際に罹患者は頭部が破裂し死亡することが確認されている。外科的な手術を試みた場合腫瘍の摘出難易度は極めて高く、摘出された例でも原因不明により100%の死亡。故に、異能性脳腫瘍は現在治療不可能である不治の病として扱われる。
異能発症者の末路は障害反動に身体が耐え切れなくなった挙句の頭部欠損や精神負荷による重度の発狂・廃人化が殆どだが、末期に至るまで進行した異能は、偏執は、異脳は、偏執への偏執と我欲の果てにそれに呑み込まれる。肥大化したエゴイズムは罹患者の制御下から完全に外れ他者をも巻き込むようになり、異能そのものとなった者は都市怪異と呼ばれる災害と化す。 異能性脳腫瘍とは本来、地下都市の徒のみにしか発症しない風土病である。然し血液などの血肉を摂取した場合には都市の徒である要件を満たし、偏執による異能性脳腫瘍の発症を引き起こす可能性がある。
都市の徒でなければ偏執を持とうとも発症せず、都市の徒であろうと偏執が無ければ発症はしない。
尚、脳の成熟や感情の複雑化などの要因から異能の発症年齢は最低でも12歳であることが確認されている。12歳未満では脳腫瘍の発生に伴う事象に肉体が耐えきれないということが最大の要因であると推測され、発症したケースは今まで確認されていない。また発症の最高年齢については不明である。
以下余談
異能性脳腫瘍 腫瘍側の思考回路
異能性脳腫瘍が"偏執"を餌に成長する都合、更なる偏執を求めて発症者の思考回路を無限ループ化する。結果としてその異能や代償は偏執を基本として設定されることが殆ど。偏執をすることに偏執し、無限ループによる連鎖で障害反動は増していき、悪化する。その都合、発症後の即死に至る異能や代償の発露、感情の歪曲化は比較的避ける傾向にある。が、自死に偏執するなどの根幹感情からして破綻している場合はこの限りではない。
死を恐れた者は無意識に死地へと向かい
他者を喪う事を恐れた者は、"他者"を作らない為に亡失。
自己嫌悪に捕らわれた者は自己否定の偏執という矛盾で頭部を欠損し
自由を願った者は、何事にも囚われないということに捕らわれる。
これが偏執に偏執する、という無限ループである。
この特徴から中期以降の異能の悪化は加速度的に進行がしやすく、末期と判断された発症者が5年以上生存したケースは無い。
異能強度及び代償
異能の強度、影響範囲についてはどれ程偏執が単純化されているかが大きな要因となる。異能の目標対象に寄り傾向が分かれるものの普遍的なものであれば無機物への干渉に留まり、他の想いを宿す対生物・人間(有機物)への干渉は困難なものである。
また本来異能とはあくまで個人の持つものであり時空への干渉を行うことのできるケースは稀。若しくは難易度による代償や障害反動の影響で発動後死亡するケースも多い。
困難なものに影響を及ぼそうとすればする程、障害反動や連なり病状悪化の要因にもなる為に無暗な異能の行使は危険とするのが発症者間の常である。
過ぎた力を持てばそれは自壊を招き、自己の範囲を通り過ぎれば障害反動は免れない。中期以降での死亡リスクは加速度的に上昇する。
脳及び脳漿について
異能性脳腫瘍発症者の脳は一般的な脳と比べ黒く変色することが確認されている。