馬鹿にされるって、そんなに嫌なことだろうか。
馬鹿にされるって、そんなに嫌なことだろうか。
《世の中には『ナメられること』を人生最悪だと考え、それを覆すために犯罪もやる人たちがいる「日本や特定階層に限らず世界中で見られる本能的なメンタリティ」》
電車で足を踏まれたり、カバンが背中に押し付けられたり、よろけたっぽい人がどしんとぶつかったりしても、「誰だお前、どんな態度だ」と思ってそちらを相手を見ようとしたり、「なによアンタ!」と乱暴に姿勢を直すふりをして、肩や肘で押し返さなくていいじゃん。素直に押されとけ、一人でもたくさんの人をその便に乗せるために。
仮にそこで、「ナメんなよ!」と言って、溜飲が下がったとしても、相手にさらにつかみかかられて職場に着くのが遅れたら、シンプルにその方が損害じゃん。 そう言えば、娘の見ていた子供アニメで、主人公の1人が太ったのを気にして、ダイエットのために、運動が得意なひとたちのところへ師事しにいくエピソードがあった。 で、主人公が「そろそろ嫌になってきたなー、今じゃなきゃいけないわけじゃないし、これじゃなきゃいけないわけじゃないし」という気分になってきたところで、その運動得意マンたちが立ち話しているのを、ふと立ち聞きする。
「あの人、いつまでもつんですかね」「そろそろ音を上げるころじゃない? もともとこういうのが好きじゃないやつらが、急にやろうとしても、そうそう根性なんて続くものじゃないし」
この人たちは、別に本人に面と向かって言ったわけじゃない。それに、自分個人を馬鹿にしたわけじゃなく、自分の所属する属性について論評しているだけだ。そして、特に別に自分に期待されていないこともそこから知れてしまう。
別に、一念再発起しなくてもいい。
しかし、そこは物語として、主人公は目に炎を浮かべながらやる気を取り戻し、ダイエットも一応成功させた。
私は横で見ていた子供に、「馬鹿にされるって、そんなに嫌なものかな」と聞いた。 「嫌だよ!」
と、子供は答えた。
そうか、嫌か。嫌なのか。