アイデア創発の方法(Eテレ『自由研究55』より)
アイデア創発の方法(Eテレ『自由研究55』より)
「とにかくはかってみる」「とにかく集めてみる」「とにかく分解してみる」
これの、「巧みだなー」と思うところは、人間の認知上のトラップを二重に突破してくれていること。 一つには、「ああー、今年は研究やらなきゃ、何しよう、何しよう、うあー!」と考えていても、アイデアは浮かばないということ。
人間の思考は連想ゲーム式にしか展開しない(まったくの孤発例というのはほぼない)。しかも、大人の職業的研究者のように、自分のフィールドでの蓄積や、前回に未達だった課題とかがあるわけでもない。 そして、日頃の授業や学生生活で「自由研究のテーマ探し的な頭の使い方」をしているわけでもない。
この状態で考えていても、まず思考は果実に到達することはないだろう。
だからまずは、手を動かし、歩き回り、フィールドワークをするところに身を置くことにする。
でも、「なんでもいいから、フィールドワークしましょう」では、大した前進にはならない。 「測ってみる」というのは、普段は風景と化している生活を、別の切り取りかたで思念単位にしてみるということだ。 数値になることで注意も向くし、比較するなどの「操作」もできるようになる。 また、「集めてみる」というのも、一個ずつだと普通は大して思考を刺激しない(よほどのバックグラウンド知識がない限りは。)ものを対象化できる。 個々には興味を喚起しないものでも、集めてきて並べると、傾向に連続性があったり、頻度に偏りがあったり、平均やそこからの逸脱が見えたり、視覚を向けるだけで一定の分析的思考が働くようになる。
だから、「まずは並べてから考える」という方向性を考える。
このあたり、すごくよく練られていると感じる。