『幽霊美少女』
『幽霊美少女』
「昨日買った、この漫画は当たりだな……」
僕はぼそぼそと言った。
うん、このヒロインはかわいい。
男主人公にそんなに個性はないけど、気持ちのいい奴であるのは確かで、そいつと幽霊の美少女が家に同居するという、ドタバタラブコメディーだ。
ありきたりと言えばありきたりだ。でも、
そういうのを上品に、上質に書いていくということが、本当のエンターテインメントだと思う。timeless。
「あーあ、僕のうちにも、こんな娘が来てくれたらな……」
ひとりごちながら、僕は昨日の学校帰りに買ったその漫画を、ベッドの脇に置いた。
「まあでも、親とか家族にまで見えちゃったら説明がめんどくさいから、自分にだけ見えるって設定がいいな」
妄想が はかどり始めた。頭の中がもやもやとし始める。
「でもあれか。家族に見えないとしても、空中に向かって僕が話しかけてたら、やっぱり変な人か。じゃあ例えばスマホの中だけにいて、自分が能動的に開いたときだけに……」
いや、それじゃただの画像と変わんないじゃん。と、自分で自分の思考にツッコミを入れる。
「だからつまり、自分の脳内だけにいて、自分で能動的に妄想しようとしたときにだけイメージが浮かんでくれればそれでいいんだよな。うん、実際的には」
「……あれ? じゃあもう叶っちゃってるのか」
そもそも願いは不要だった。
<完>