「じゃ、百年の歴史を見るには、百年かけなくちゃ見きれない。」
じゃ、百年の歴史を見るには、百年かけなくちゃ見きれない。」
ドラえもんの中にある、やけに含蓄のある名言。
毒舌系の『ドラえもんの中の名言』的なものは、それこそいっぱいあるけど、人生に対する有用性の高いのはこれかな。
のび太が先生から、「町の歴史を調べなさい」という宿題を出され(そののび太はインターネットなんてない時代に描かれているんだぜ)たといって始まる話。
そのあと、次のようなやりとりがある。
のび太「本でしらべるなんて、めんどくさいことしないの。「タイムマシン」でちょっと見てくる。」
ドラえもん「おい、まてよ。何年何月何日何時ごろ、この町のどこで何が起きたか、知っていてでかけていくの?」
の「知らないからいくんだよ。」
この後に、表題のドラえもんのセリフが続く。
そりゃそうで、「歴史そのもの」なんて、その無圧縮率はめちゃくちゃ高くなって、動画どころか、生放送どころか、多視点進行であることを考えると、そのまま体験しようと思ったら人間の寿命の数倍(数千倍、数万倍?)の時間がダラダラかかってしまうはずだ。 やはり、会話よりは動画、動画よりも漫画、漫画よりも文章と、圧縮率の高い媒体から知識を吸収できる方が有利ではある。情報を咀嚼する顎の力がいる。 (これは、「情報は一次情報だけあればいい」とか「本を読むなら古典を読め」ということではない) そしてもう一つ、これは余談めくけど、これを最初に読んだ年齢の、読んでいる最中は、のび太のセリフを読みながら、「おおー、のび太頭いいなあ、ずるいけど、確かにそれは楽そうでいいな、うらやましい」というような心象が浮かんでいたと思う。子供心に。 そこらへん、のび太のセリフに託されたミスリーディングな論理もすごくうまいし、それをみごとひっくり返して「ああっ!」と子供にも思い知らせた、このシーンの着眼点も見事すぎる。