30代や40代の楽しさとはどんなものだろう
「人生の、30代における楽しさや40代の楽しさを20代に伝えられる小説みたいなものを書けたらいいなあ」なんてことを夢想してみたりする。 まだ私がすごく若いころ、「社会に出て働くとはどんな感じか」「社会の厳しさとは」「人間関係の機微」「恋愛」「付き合うって何をすることなのか」「『みんな』というものの相場観」というようなことを、実感を持たせてくれる形態で(つまり物語の形式で)予習させてくれる本を探しまくっていた。 それの変形したような形で、大人になっても人生は続くし、そこにそれなりに大志や正義や野心は残り、ということを書けたらな。「帰りの飲み屋で一杯やるのが楽しみ」だとか、「たまの休日くらいごろごろさせてくれよ」みたいな、戯画化された格好悪さを描くってことじゃなくて。 ちゃんと小さな楽しさを見つめる目線と、小さいけれどもちゃんと寄せられてる幸せと、小さいながらも必死で維持している心意気みたいなものが見え隠れしつつ、でも閉塞しつつ絶望しつつ生きているぜっていう風景を、そういう経験のまだない人に向けて説明できたらなあ、とか。 夢と恋愛と友情と家族愛だけが、物語ではない。
かといって、イデオロギーや社会性が物語でもないだろう。
でも、子育てそのものの苦しさとか、さっぱりうだつの上がらないまま老化現象の始まってくる、追いつめられるような感じとか、ポジティブに採点するのはすごく難しい気はする。美化のしようすらない。 でもまあ、実際にそんな大変なことを今さらやるかどうかは別として、物語というものがそんな風に、誰かの生きるニッチな心象風景を、別の立場で生きている人に追体験させてあげることのできるものであってくれたらいいなあ、という目線は昔と変わらずある。 意味合いは少しずつ変わってきたけど、メタなレベルでは昔と変わらずずっとある、と思っている。