『銀と金』11巻の再読メモ
『銀と金』11巻の再読メモ
#読書メモ
11巻。競馬回。まあ、この漫画のファンであればあるほど、「蛇足」感のある巻ではあると思う。
そんな巻について、たまたま再読したので、ちょっとシーンやセリフを引用しながら、想起されたことを書きつけておく。
「あの人に見るも無惨な敗北をさせるわけにはいかない…… 惨敗だけはさせられない………(位置25)
⇒今回再読したかったセリフが、まずこれ。
ちょっとこう、ウクライナ問題を考えていて、ふと去来した文字的心境。
「岡部を中心にした一種の利益共同体 騎手の派閥みたいなもんだ……」
「岡部さんクラスになるとどうしてもそういう人間関係が発生してしまう 好むと好まざるにかかわらずな……」(位置30)
⇒で、このあとに、乗り切れないほどの騎乗依頼を、「次に乗りますから」と言って断りつつ、自分を慕う“若い者”に回してやってくれるように頼む、というシステムを説明する。
「こういう連中が岡部の位置取りを助け」
「常勝岡部の神話をたしかにしていっているんだ」
「いかに岡部といえども 腕だけじゃああは勝てないさ」(位置33)
⇒こういう話を聞くと、「ありえそうだな」「あるんだろうな」というような直感や実感が呼び起こされる。別に実話というわけでもなく、実体験があるわけでもないのに。
これは、よくもあり、悪くもある。そういった構造や力学を、「あ、あるのかもしれない。だって俺、思い浮かべられるもん。そういう人情を」という感覚がまったくない人は、たぶん生きるのに苦労するし、低ビットレート・ナローバンドて圧縮率の高い文献を読む際に、その脳内再生や解凍に難を生むと思う。文系脳?
反面、それは勝手読みや陰謀論を生むだろう。ありもしない裏社会や社会の厳しさを勝手に想像してしまうこともあるだろう。
表沙汰になった事例だけでも一度や二度じゃないのですから 首尾よく誰にも悟られず成功した例はその失敗の数倍ある……(位置164)
⇒これも、「そうだろうな」と思ってしまうけど、トレースやトラックが機能していて、水も漏らさない体制かもしれないのに。
そのプロの目にさらされたら いくら似ているとはいえ もともと馬体から発するエネルギーが違う 看過される可能性は高い(位置165)
⇒これも、どこかで信じてしまう。
「筋肉がどうこう、重心がどうこうじゃない、“エネルギーが違う”」「オーラがすごい」という状態が、きっとあるんじゃないかとか。“一流” は、それを見抜けるんじゃないかとか。
ファンタジーかもしれないのに。
「権力でコマはそろえられても その人間の心… 気迫までは買えぬものですよ」(位置179)
⇒これも、なんか今の戦争を……
「いっそ二流なら万事 堅くやり」
「一流ゆえスキが生まれる」(位置175)
⇒一つ前の引用シーンの少し手前にあるセリフ。
本当の“愚直”って、熟達する前じゃないと、やらないよなあ。なんてことを思って人生に耽る。
「頭がいい人ほど自分への言い訳もたくさん思いつく」って話を思い出す。←これ、なんだったっけ?
いつか来るという目に見えぬ圧力
いうなら……… 岡部の威光が道を開いたのだ(位置133)
⇒「論理+トリック」というミステリー的味わいも福本伸行漫画の魅力の一つだけど、
こういう心理戦の緊張感みたいなのも、もう一方の魅力。勝負もの、勝負漫画。
そんで、こういう教訓や心理ばかりを拾おうとするような福本伸行漫画の読み方というのも当然あって、そうすると、シリーズの中の蛇足・駄作っぽいエピソードの中にも光るものを抱えているシリーズというものも出てくる。カイジの人間競馬とか。
そして、こういう「一瞬の中に存在した心理戦」みたいなもので観客の間が持つような芸を身につけてしまったがゆえに、人気作『アカギ』の終盤では、一手を進めるのに何ページでもかけられるほど、時間が引き伸ばされていったのだった。(脱線した)
馬しか乗れぬクズが……… その馬も満足になれなくてどうする………! クズどもクズども(同)
⇒うん……。こうやって、人を見下して、内心で毒づくよね。わかるよ。
from 2022/03/21-2022/03/31