UDL
学習環境の中に含まれる学びのエキスパート(expert learner)を育てる上での根本的な障壁、つまり、融通が利かず「全員一律で対応させようとさせる(one-size-fits-all)」ようなカリキュラムに対処するための枠組み UDL を用いて作成されたカリキュラムは、最初の段階から全ての学習者のニーズに合わせるようデザインされる
教育者がさまざまなニーズに対応できるような柔軟な学習の目標、方法、教材・教具、評価の方法を提供し、学習者の個人差に対処する
UDLの3原則
原則Ⅰ:提示のための多様な方法の提供(学びの“what”/“何を”学ぶか)提示された情報をどのように認識し、理解するかは、学習者によって異なります。例えば、感覚器官に障害のある人(視覚障害や聴覚障害など)、学習障害のある人(ディスレクシアなど)、言語や文化の異なる人などが学習内容にアプローチするためには、皆それぞれに違った方法が必要になるでしょう。他の人にとっても、単に情報を得るだけなら、印刷された文書より視覚的または聴覚的な手段の方が、より素早く、効率が良いかもしれません。また、多様な提示方法が用いられる時こそ、生徒は学習内容そのものはもちろん、他の事柄とも結び付けていくことができますから、学習や学習の転移(前の学習が後の学習に影響を与えること)が起こるのです。つまり、全ての学習者に最適な一つの提示方法というものが存在するのではなく、提示のためのオプション(複数の方法)を提供することが不可欠なのです。 原則Ⅱ:行動と表出のための多様な方法の提供(学びの“how”/“どのように”学ぶか)どのように学習を進めたり知っていることを表現するかは、学習者によって異なります。例えば、重度の運動機能障害(脳性まひなど)がある人、方略的に考えたり見通しを立てて行動したりすることに困難のある人(実行機能障害など)、言語の壁がある人などは、それぞれ全く違うやり方で学習課題にアプローチします。自分の伝えたいことを言葉で話すのではなく書いて表現する方がうまくできる人もいれば、その逆の人もいるかもしれません。また、行動と表出には非常に多くの方略や練習、(思考の)整理が必要になりますが、これらもまた学習者によって異なるのだということも、私たちは認識しなければなりません。現実には、全ての学習者に最UDL Guidelines Version 2.07適な一つの行動や表出の方法というものは存在しないので、行動と表現のためのオプション(複数の方法)を提供することが不可欠なのです。 原則Ⅲ:取り組みのための多様な方法の提供(学びの“why”/なぜ学ぶのか)感情は学習のカギを握る重要な要素ですが、どんな方法で学習に取り組んだりやる気を出したりできるかは、学習者によって顕著に異なります。感情に影響を与える要因は、個人個人さまざまです。たとえば、脳科学的要因、文化的要因、その人個人との関連性や主観、背景となる知識のほかにも、このガイドラインで示すさまざまな要素が含まれます。たまたま起きたことや目新しいことだと張り切って取り組む学習者もいれば、そういうものには取り組まない学習者もいます。中には、そのような要素を不安がって、むしろいつも決まった事柄に取り組むのを好む学習者もいます。一人で作業するのを好む学習者もいるかもしれませんし、仲間と作業するのを好む学習者もいるでしょう。現実には、全ての学習者にとって全ての状況で最適な一つの取り組みの方法というものはなく、取り組み方についても多様なオプション(複数の方法)を用意することが不可欠なのです。