関連性理論
Relevance Theory
ダン・スペルベル、ディアドリ・ウィルソン
p98
原則1
私たち人間の認知は、一般的傾向として、関連性が最大 (maximal)となるように調整されている。
Aさんが「いま何時?」と尋ねたとき、Bさんが「いけない! 会議の準備をしないと!」と答えたとしよう。BさんはAサンカラノ問いかに直接答えているわけではない。しかし会議が迫っていることに気づいて、言外のうちに特定の時刻がもうすぐであることをAさんに示している。私たちがこのような会話を混乱せずら理解できるのは、Bさんから返ってくる返事が、いま問い掛けた発話内容に最大限関係しているであろうと無意識のうちに期待し、思い込んでいるからだ。
原則2
すべての顕示的伝達行為は、それ自体が受け手にとって最適(optimal)な関連性を持つという見込みの上で伝わっていく。
私たちは相手の心を推測しようとするとき、なるべく努力せずに、コストをかけずに理解したいと願う。Aさんが「おい、もうお昼を過ぎてるぞ」と呼びかけたとき、Bさんは「ほんとだ、大変だ!」と答えたとしよう。「おい」という呼びかけは顕示的伝達行為、つまりAさんの意図を明示しようとする行為である。これによってBさんは、Aさんが何か重要なことをわざわざ伝えようとしているのだとわかる。
Bさんは「おい」という呼びかけによって仕事のスケジュールを思い出した。昼食を食べに行こうとか、昼のバラエティ番組をテレビで観ようなどとは受けとらなかった。Bさんは推測のコストを最小限に抑えて、そのバンメで最適な関連性だけを選択したのである。
出典